カレッジマネジメント202号
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26リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 20174年制大学への進学率が18歳人口の半数を超え、他方で大学への進学が容易になった現在、明確な意図を持たないまま大学に進学してくる層が生じてくる。そうした者も、大学で新たにやりたいことが見つかればそれでよいのだが、そうでないと大学からドロップアウトする。高校中退と比較してさほど耳目を集めない大学中退であるが、実は高等教育機関全体で11万7000人※にのぼり、その数は増加傾向にある。この中退率には、進路変更や経済的な困窮を理由とする者も含まれるが、そうではなく、大学に留まる理由が何も見いだせずに中退する者も多くいる。高校よりも個人の自由と選択の幅が広がる大学では、そうであるがために容易に中退する。中退者が多い大学では、何とか大学に意味を見いださせ卒業に至らせようと、様々な支援の手を差し伸べる。その工夫を重ねている、東京未来大学(以下、未来大)の取り組みを紹介しよう。未来大は「こども心理学部」(定員280名)、「モチベーション行動科学部」(定員60名)の2学部から成り、こども心理学部は「こども保育・教育専攻」と「こども心理専攻」の2専攻を持つ。法人は全国で手広く専門学校を展開している三幸学園であるが、大学の設立は2007年、モチベーション行動科学部の設置が2012年と、小規模な新しい大学である。開学以来、就職希望者の就職率は毎年90%以上であり、公立保育士・公立幼稚園教諭、小学校教諭をはじめ、一部上場の企業への就職者も年々増えている。こうした大学へ進学してくる学生とはどのような特性を持つのか。大坊郁夫学長は次のように語られる。「新入生時点では、それまでの学校教育において成功体験をあまり持たず、基礎学力の点でも学習習慣の点でも、大学生活にすぐには適応できない者が少なくないのです。こども保育・教育専攻は、保育者になることを目標にしている者が多いのですが、こども心理専攻やモチベーション行動科学部は、積極的に将来起業したいとか、生徒の意欲を高める教育者になりたいという者がいる一方、受け身的な学生が多いように感じます。また、通信制高校出身者のなかには過去の不登校経験のために、集団で授業を受けることが容易ではない者もいます。こうした多様な学生のモチベーションを如何に高め、自己効力感を持って行動できるようにするか。本学の教育はそれを方針として掲げています」。未来大の中退率は学年や学部を平均すれば、全国平均からすると低い数字であるにも拘わらず、さらにこの数値を少しでも下げるべく、そしてまた大学への入学を許可した以上、きちんと付加価値をつけて社会へ送り出すことをモットーとし、中退防止に力を注ぐ。その具体策は、図表1に見るような3方向からの学生サポートである。この3方向からのサポートのなかでも、特色あるサポートはCA(キャンパスアドバイザー)であろう。未来大は1〜4年次までクラス制を敷いており、クラスに1名CAを配置し徹底した個別サポートで学生の主体性を育てる大坊郁夫 学長意味を見いだせない大学進学CA(キャンパスアドバイザー)の活躍※日本中退予防研究所(2010)『中退白書』より東京未来大学C A S E3

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