カレッジマネジメント202号
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32ある大学で、IB出身の学生が「本質的な問いかけ」をしたところ、教員が「何でそんな当たり前のことを聞くのか」と応対して大いに問題になったそうだ。IB出身の学生は「問い」を大切にする。そして、その問いから対話をして考えを深めていく。なぜならば、そういった教育を受けてきたからだ。こうした表面的ではない、本質を考える学習に加えてIB出身者は英語での授業も求める。それに応えてくれる国際基督教大学と上智大学国際教養学部が、彼らの中では人気進学先となっている。さて、今国立大学を中心にIBによる入学者選抜が導入されつつあるが、IBの卒業生をしっかりと受け入れられるだろうか。「IB学生脅威論」が出てこなければ良いが。政府は、2013年6月に「日本再興戦略」において「グローバル化に対応した教育を牽引する学校群の形成」としてIB認定校等の大幅な増加を目指すことを示し、2018年までに200校という数値目標を掲げた。その後も「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)」で「国際的に通用する大学入学資格が取得可能な教育プログラム(国際バカロレア)の普及拡大を図り、2020年までに国際バカロレア認定校等を200校以上に増やす」と示している。経済界からも、日本経済団体連合会が「次世代を担う人材育成に向けて求められる教育改革」(2014年)等の提言で、IB認定校の拡大を求めている。大学では脅威論が出そうなIB教育、一方で政府も経済界も導入拡大を求める。このIBとはいったいどんなものなのか。IB教育は、国際学校の生徒が母国に帰ったときに困らぬよう、どこの国でも通用する大学入学資格を与えることを目指したことがきっかけで、1968年にジュネーブで生まれた。最終的には、特定の国の学校制度に縛られない教育プログラムを目指して、「国際的な意義」「共感する心」「高い学力」を通して世界平和に貢献することを理想とした教育プログラムを開発することになり、特定の文化や国とは独立したカリキュラムと試験制度ができあがる。国際的な大学入学資格を得ることから、カリキュラムに母語と外国語の2言語が設けられるのは必然だった。また理科・数学の必要性は誰もが認めるものでありすんなりと収まった。さらに複数の人文科学と社会科学から1分野を選択することが決まり、最後に幅広くバランスの良いカリキュラムとするために芸術が入れられた。こうして「科目」が決まった。加えて、IBの独自性を求めて課題論文(EE)と「創造性・活動・奉仕」(CAS)が導入される。特に、CASは「生徒が高度な教育を受けたかどうかは、試験で何点取れるかではなく、全く新しい状況で何ができるかによって確かめられる」との信念から、学問的な学習の外にある「実社会の重要性」に価値を置く。最後に、カリキュラム全体の要となるものとして、クリティカル・シンキングを重んじた「知の理論」(Theory of Knowledge:TOK)を設置した。知識の形態、分野相互の理解、日常の経験と知識の結びつきを学ぶものだ。知識そのものを批判的に捉えることも特徴的である。リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017インターナショナル・バカロレア(IB)、日本での現状を探る後藤健夫 教育ジャーナリストIBの教育とは寄 稿
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