カレッジマネジメント202号
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33こうして、世界最高水準といわれる高校生向けのプログラムができあがったのだ。IB教育は点数主義や正解主義とは真逆なものなのである。IBには、年齢に応じて、4つのプログラムがある。初等教育対象のプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)、前期中等教育対象のミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、そして、後期中等教育で行うディプロマ・プログラム(DP)とキャリア関連プログラム(CP)だ。日本で「IB」として話題になっているものはこのうちのDPだ。DPは2年間のカリキュラムである。日本の高校の場合、2年生・3年生が該当する。IBディプロマを取得するための世界統一の最終試験があり、これで一定の成績を修めると国際的な大学入学資格を得られる。試験は正解が一つに決まるようなものではなく、論述型の試験だ。普段の授業で、いわゆる「正解がない問い」を扱っているから、当然といえば当然である。数学等では知識の応用的な活用を求められる。この最終試験は45点満点で、40点を超えると世界大学ランキングの上位にある大学から奨学金付きで入学のオファーが来るとも言われている。こうしたプログラムを、ニューヨーク国連国際学校で40年以上にわたって教えている津田和男先生は、「生徒が知識を自分なりに理解し、吟味し、自分の意見を持ち、それを人と共有し、きちんと表現できるよう育てることを目標とした教育プログラムです。課題を与えるのではなく、生徒が自ら課題を探し、その解決に向けて、系統立ててリサーチし、実践できるようにサポートするプログラムなのです」と説明する。つまりTOKが求めるように、知識を批判的思考によって主体的に獲得しつつ、そこから築いた自分の意見を対話的に共有できるようにし、さらに、自ら課題を発見して解決をするのである。これは、まさに今、次期学習指導要領の改訂に向けて示されている「主体的で対話的で深い学び」を実践するものだ。TOKでは知識を批判的に捉えるだけでなく、その知識がどこからきて誰が正しいと判断したのかまでを問う。それほどに知識の枠組みを重視する。一方で、知識自体もディスカッションやリサーチの中で獲得するため知識の獲得と思考力や表現力が共に育つ。こうした教育をリクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017IBのプログラム図表1 <インターナショナル・バカロレア(IB)の教育について>グループ名科目例1 言語と文学(母国語)言語A:文学、言語A:言語と文化、文学と演劇(※)2 言語習得(外国語)言語B、初級語学3 個人と社会ビジネス、経済、地理、グローバル政治、歴史、心理学、環境システムと社会(※)、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教(※)4 理科生物、化学、物理、デザインテクノロジー、環境システムと社会(※)、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学(※)5 数学数学スタディーズ、数学SL、数学HL、数学FHL6 芸術音楽、美術、ダンス、フィルム、文学と演劇(※)DPのカリキュラムは、以下の6つのグループ(教科)及び「コア」と呼ばれる3つの必修要件から構成される。生徒は、6つのグループから各教科ずつ選択し、6科目を2年間で学習する。ただし、「芸術」(グループ6)は他のグループからの科目に代えることも可能となっている。また、大学やその後の職業において必要となる専門分野の知識やスキルを、大学入学前の段階で準備しておく観点から、6科目のうち、3〜4科目を上級レベル(HL、各240時間)、その他を標準レベル(SL、各150時間)として学習する。さらに、カリキュラムの中核となる核(「コア」)として、以下の3つの必修要件を並行して履修する。課題論文(EE:Extended Essay)履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。知の理論(TOK:Theory of Knowledge)「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探究する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促す。最低100時間の学習。創造性・活動・奉仕(CAS:Creativity/Action/Service)創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む。(日本語DP対象科目等) 日本語で実施可能又は実施可能予定の科目等は、以下のとおり。 ・以下の科目: 「個人と社会」(グループ3)のうち、「経済」、「地理」及び「歴史」 「理科」(グループ4)のうち、「生物」、「化学」及び「物理」 「数学」(グループ5)のうち、「数学スタディーズ」、「数学SL」及び「数学HL」 「芸術」(グループ6)のうち、「音楽」及び「美術」 ※日本語DPでも、6科目中2科目(通常、グループ2(外国語)に加えて更に1科目)は、英語等で履修することが必要。 ・「コア」(3必修要件)の全て: 「課題論文」(EE)、「知の理論」(TOK)及び「創造性・活動・奉仕」(CAS)(※)なお、「文学と演劇」はグループ1と6の横断科目。「環境システムと社会」はグループ3と4の横断科目。また、「世界の宗教」および「スポーツ・運動・健康科学」はSLのみ。
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