カレッジマネジメント202号
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46IR(Institutional Research)については、本誌189号(2014年)において「戦略的意思決定を支えるIR」の特集が組まれたほか、本連載でも、評価や内部質保証のあり方を論じるなかでこの問題を取り上げた。IRには広く合意形成された共通の定義といえるものがなく、多義的な概念と説明されることが少なくないが、本稿では、「意思決定、改善活動、学内外の関係者への報告・説明などのためにデータを収集・分析する機能または活動を意味し、教育・研究等に関するデータの収集・分析を中心とした教学IRと、経営に関するデータの収集・分析を目的とした経営IRの2つを区別して論じられることもある」との認識に基づき、その課題と在り方について論じたい。IRの萌芽は1960年代のアメリカであり、大学を取り巻く環境の変化や外部からの圧力を受ける形で発達してきたとされている。また、IRを担当する専門職を中心に約4500人の会員を擁するAIR(Association of Institutional Research)がその発達に大きな役割を果たしているといわれている。これらの背景や経緯について、ここでは詳述しないが、我が国においてもIRへの関心が急速に高まり、その活動が拡大しつつある。その現状については、前述の本誌特集内の小林雅之・劉文君「日本型IR構築に向けて」において、東京大学が行った「全国大学IR調査」の結果として紹介されている。そのまとめで、「日本におけるIR活動は、学生調査を通じた学習成果の把握を中心に推進されていること、アクレディテーションや情報公表などへの対応が行われていることに加え、IR組織はガバナンスとの関連から設置されていること、執行部への情報の提供・分析、意思決定への貢献などの役割や機能も重視されていることが明らかになった」としたうえで、「全学レベルのIR組織の設置はまだ少数であり、財務に関する業務についての関与はそれほど高くない。また、データの蓄積・分析などはまだ制約がある。これらの現状から、IRに関わる専門職人材の育成、IR組織及びその活動の高度化が今後の課題であることが示唆される」と述べている。2013年12月実施の調査であり、それ以降に本格的な取り組みを開始した大学や活動をさらに進化させた大学もあるだろうが、IR活動を大学機能の高度化につなげるために乗り越えるべき課題は多い。行政や教育においても重視され始めたKPIIRが大学の活動の中から生まれた概念であるのに対して、KPI(Key Performance Indicator)は企業活動において重視されるようになった概念である。日本語にすると「業績評価指標」または「業績管理指標」であり、それ自体決して新しい概念でも手法でもない。そうであるにも拘わらず、KPIという用語が近年の企業経営において盛んに用いられ、経営者から度々発せられるようになるや、行政や教育においてもKPIの設定が求大学を強くする「大学経営改革」「見える化」の観点からIRとKPIによる大学機能の高度化を考える吉武博通 筑波大学 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 201768IRへの関心の急速な高まりと活動の拡大

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