カレッジマネジメント202号
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48リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017生産偏重とは、モノづくりの現場だけでなく、全ての職場において「見える化」を徹底することの大切さを述べたものであり、仕組み偏重では、実際の業務に携わる人達の「感度」の大切さを強調している。そのうえで、「良い見える化」は「気づき」を育み、「思考」を育み、「対話」を育み、「行動」を育むと述べ、「見える」ことが「気づき→思考→対話→行動」という一連の「影響の連鎖」をもたらし、その結果として問題解決が促進されるとの認識を示している。明治大学でIR機能を担う評価情報事務室の山本幸一氏も、本稿に寄せたコメントで、「異なる立場の教職員が、1つの目的に向けて話し合うこと、つまり組織的な議論を生み出すことが、IRの役割だと考える。部分最適になりがちで、改善が滞りがちな教学運営にあって、データを媒介に、異なる部門同士、あるいは学科会議のような機会に、大学の未来や、学生の将来に思いを馳せる、そして、何らかの教育改善に向けた活動がはじまる。データは組織や人のカベを溶かす力がある。データだけで課題を解決することはできないが、データは、人の思いをつなぎ、教育を動かすきっかけを提供できる」と述べている。前掲書の主張と通じる点が多い。データに基づく対話・判断・改善を常態化する次に、IRとKPIを大学機能の高度化につなげるために何が必要か考えてみたい。IRは「データの収集・分析による意思決定の支援」と説明されることもあり、その関心は大学執行部の意思決定、全学的な合意形成、戦略・計画の策定に対する支援に向きがちだが、より重要なことは、大学業務全般において、部署や職階に拘わらず、データに基づく対話、判断、改善が日常的に行われる状態をつくりあげることである。「情報」は、ヒト、モノ、カネと並ぶ4つの経営資源の一つである。経営の巧拙は、いかに経営資源を獲得するか、それらをどれだけ有効かつ効率的に活用するかによって決まる。特に、情報は目に見えないが故にその収集能力や活用度を把握することは難しい。なお、ここでいう情報は、ヒト、モノ、カネ以外の無形資源の総称であり、それと使い分けるため、本稿では「データ」と呼ぶことにする。データには定性データと定量データがあり、ともに重要であるが、トップから現場に至る構成員の感度や想像力があって、はじめて活きてくる。佐賀大学でIR活動を推進してきた企画評価課の末次剛健志氏は、本稿に寄せたコメントで、「見た目は数字の羅列でも、例えば、就職率一つをとっても、学生一人ひとりの努力や就職担当の献身的な支援の結果であることを感じ、結果が芳しくなければその背景に何があるのかを想像する、そのような感性がIR担当者には必要」と強調する。大学の活動は数値で表せないものの方が圧倒的に多い。それが難しければ定性データでも良い。それすら難しければ、現場、現物、現実にじかに触れながら五感で感じとればよい。このような考え方や行動を組織内に広げ、定着させるためには、トップがその重要性を語り続けるとともに、自ら実践しなければならない。また、部署ごとにデータの棚卸を行い、直ちに学内で共有できるもの、見せるために工夫が必要なもの、新たに収集が必要なものを明らかにし、整ったものから、様々な機会を捉えて上位者や関係部署に示していく必要がある。統合型データベースの構築、ダッシュ山本幸一氏(明治大学)末次剛健志氏(佐賀大学)

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