カレッジマネジメント202号
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海中を飛ぶ奇跡 ウェットスーツ、タンク、フィン、レギュレータなどの用具とともに集まってくれたのが、東京海洋大学・潜水部のメンバー達だ。現在、16名の部員を率いる部長の大沼美里さんは、なんと61代目。歴史と伝統は、その活動ポリシーにも反映されている。「新入生が入部すると、まず5月の合宿で全日本潜水連盟(JUDF)が認定するライセンス取得の講習を開始します。潜水部では、スキルのレベルも一般のダイビング講習と比べて、独自の高い基準を設けており、厳しい練習が必要なものにしています。60年前の環境下における潜水が厳しいものであった原点を忘れずに活動し続けています」と大沼さんは語る。合宿では、指導面でOBの方々に協力いただき、時には水中で全ての道具を自らはずし、また水中で付け直す水中脱着の訓練も行う。こうしたハードな練習によって、優れた潜水スキルやセルフレスキュー(自己安全管理)の能力を身につけ、同時に仲間を連れて潜水活動を行えるリーダーシップも養っていくのだ。「私が入部を決めた理由の一つに『海の安全を知りたい』という想いがありました。宮城県出身なので中学生の時に東日本大震災を経験しました。身近にあった海で起こった出来事が、海の安全を脅かすものであったからこそ、潜水部で学び、体験したことを伝えていきたいと思ったのです」。月2回、千葉県館山市にある大学の施設を利用して合宿をする。体力づくりのため、フィンを使って泳ぐ「関東学生連盟主催フリッパー大会」へも参加する。こうした伝統的な活動を維持してきたからこそ、独自の風土が根付いているのだ。「人間が海中にいられることは奇跡だと思っています。潜っている時は、海を飛んでいるような浮遊感があり、その感覚が大好きでまた潜る、という感じですね」。精神的にも体力的にも鍛えているからこそできる安全潜水。「海中を飛ぶ奇跡」を知り尽くした彼女達が、海の安全と楽しさを伝承してくれるだろう。 (写真・文/西山俊哉)大沼美里 さん(海洋科学部 海洋環境学科2年)学生のリーダー東京海洋大学 潜水部当代当代Vol.64部 長第61代
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