カレッジマネジメント203号
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16リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017「課題の把握」には自己点検・評価の過程が重要である一方で、改善促進や組織の運営改善に向けて教職員の意識変化を引き起こすには、学内の取り組みに加えて、“外部から指摘される”ことが一つの圧力や動機づけとして機能していることを示唆した。従って、自己点検・評価を促した意味も含めて、認証評価は大学等の「質の保証」「改善に資する」には有効であったと言える。専門職高等教育質保証機構とは─専門学校の教育水準の維持・向上を図る一般社団法人専門職高等教育質保証機構(「機構」と呼ぶ。)は、当初、一般社団法人ビューティビジネス評価機構として、文部科学大臣からビューティビジネス専門職大学院の認証評価を行う機関として認証された(2012年7月31日)。専門学校教育の質保証事業への展開を目指して、機構は、法人名を変更(2014年9月24日)し、専修学校職業実践専門課程第三者評価の試行を実施した。この試行的評価を通じて、専門学校の第三者評価を実施する上での問題点・課題を洗い出した上で、2017年度より本格的実施を開始する(5)。機構の第三者評価は、専門学校の教育水準の維持及び向上を図るとともに、その個性的で多様な発展に資するよう、学修成果を基盤においた質保証システムとして、以下の内容で実施される。・専修学校設置基準、関係法令及び職業実践専門課程の認定要件に適合していることを認定する。・学校(あるいは課程)が目的・目標としている学修成果の達成状況を評価する。・学校が内部の質保証体制を整備し、それが機能し、絶えず質の改善・向上が図られているかを評価する。高等教育のグローバル化が進展しつつある現在、職業教育においてもまた、国際通用性が求められている。このことを踏まえ、学校における内部質保証システム、学修成果に加えて、次項で解説する教育情報の公表をも重視した評価が実施される。教育情報の発信と活用─ステークホルダーの視点に立っているか学校の「社会とともに」の意識も高まり、透明性や公共性が徐々に進展しており、学校による社会への情報発信も積極的に行われるようになってきている。しかし、学校から発信する情報は、受信する側(ステークホルダー)の視点に必ずしも立っていない一方的な「宣伝」であり、本当に欲しい情報ではないと認識されている傾向がある。各学校から発信された情報は、ステークホルダーが理解できて共有されなければ、意味を持たない。このためには、ある程度定められたフォーマットに基づいた情報が必要であろう。一方で、それぞれの学校の個性が明確に見えることも重要であることは言うまでもない。学校から発信される情報は、両者のバランスが肝要である。最近、運用が開始された大学ポートレート(6)は、共通に定められたフォーマットに基づいて大学情報を発信するものであり、専門学校にも、同様のデータベースシステムを構築することが喫緊の課題である。データベースのもう一つの重要な機能は、その活用である。各学校では、他校から発信されている情報を分析して、自校の現況を的確に把握し、その教育の質向上・改善に資するとともに、自らの戦略を策定していくことが不可欠である。職業教育質保証の方向性─求められる組織による学習成果の自律的改善・向上わが国の専門学校は、職業教育を担っている高等教育機関として、国際的にも注目されているが、現在の最大の課題は、その質保証システムの構築である。職業教育は非常に多様であり、その学修成果を測定する画一的な方法はない。さりとて、それぞれの分野ごとに別々の基準を作成して「分野別質保証」を実施することは非現実的である。学校が自律的な組織として社会からの信頼を得るた

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