カレッジマネジメント203号
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17リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017めには、その内部で自らの提供する教育の質を確認・保証し、その一連の方法や結果を国内外に示していくことが求められる。即ち、教育の質保証の責任は、第一義的には学校自身にあり、教育内容や方法を創造的に進化・発展させて、継続的に質の向上を進めていくこと(「質リテラシー(quality literacy)」と呼ぶ。)が不可欠である。即ち、それぞれの教育プログラムを提供する教員や学科自らが、その質を保証する責任を持ち、さらに、機関全体として、その内容で提供する教育プログラムの質保証を行う責任を持っている。この「質」の最重要テーマは、学修成果(学生が身につけた知識、技能、能力、態度等)であることは言うまでもない(図2)。「リテラシー」という言葉の原義としては、「読み書き能力」を表していた。しかし、現在では、様々な領域・分野が、それぞれ専門化・高度化しており、各領域ごとのリテラシーがあると考えられる。従って、「リテラシー」は、「ある分野で用いられている記述体系を理解・整理し、活用する能力」と定義される。例えば、「情報リテラシー」とは、「コンピュータ等の情報関連技術を習得して、情報社会において積極的に情報を活用する能力」と定義されている。このような世界の流れの中で、高等教育においては「質リテラシー」という概念を提唱する。欧州では、組織が自発的に質向上を進めていくという特性や運営を「質の文化(quality culture)」と称している。質リテラシーには、組織文化的及び組織運営的の二つの側面がある。組織文化的側面とは、質に関する価値・信念・期待・責務が組織内で共有されている(学内の共通認識)ことであり、組織運営的側面とは、質を向上し、構成員の恊働体制やプロセスを有していること(学内の運営組織)である。このような「質リテラシー」あるいは「質の文化」を基盤にして、内部質保証システムを構築する必要がある。このように、各機関の内部質保証システムを構築することが最重要課題である。第三者による質保証の目的は、その内部質保証システムが機能し、質(特に学修成果)の改善・向上が絶えず計られていることを検証し、社会にその状況を示すことである。最後に、「評価」は質改善・向上と質保証を行うために必要な手段であって、評価そのものが目的化してはならない。【参考文献】(1) 川口昭彦(一般社団法人専門職高等教育質保証機構編)『高等職業教育質保証の理論と実践』専門学校質保証シリーズ、ぎょうせい、2015年(2) 独立行政法人大学評価・学位授与機構編著『大学評価文化の定着 ─ 日本の大学は世界で通用するか?』大学評価・学位授与機構大学評価シリーズ、ぎょうせい、2014年(3) 厚生労働省「能力開発基本調査:結果の概要」(平成21年度)http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-21b.pdf (アクセス日:2017年2月7日)(4) 『進化する大学機関別認証評価─ 第1サイクルの検証と第2サイクルにおける改善 ─』(2013) 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構ウェブサイト http://www.niad.ac.jp/n_hyouka/jouhou/__icsFiles/aeldle/2013/05/22/no6_12_soukatsu.daigaku.pdf (アクセス日:2017年2月7日)(5) 一般社団法人専門職高等教育質保証機構ウェブサイト http://qaphe.com (アクセス日:2017年2月7日)(6) 大学ポートレート http://portraits.niad.ac.jp (アクセス日:2017年2月7日)特集日本型職業教育の未来図2 保証すべきは学修成果を示す職業資格・学位の質授与される職業資格授与される学位学生の学習習得した知識・技能・能力の証明保証すべき「質」保証すべき「質」学修成果

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