カレッジマネジメント203号
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19リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017材とは、どんな人材をイメージしているのでしょうか。分りやすいプロフェッショナルというと、弁護士や公認会計士、税理士等資格の必要な士業の方を思い浮かべるかもしれません。ですが私の言うプロフェッショナル人材は、資格が必要な職業に限定されません。企業の中には経営、人事、財務、研究開発、生産管理、マーケティング、営業等様々な領域がありますが、現在はそれぞれの領域が専門性を高め、求められる知識やスキルも高度化しています。ある特定の領域で専門性を高め、その領域では社外の評価も得ており、経営者でさえ一目置くような人や、そうした境地を目指す人達がプロフェッショナル人材といえます。現実の日本企業では、特定の仕事で専門性を高め、ある領域のプロフェッショナルを目指している人材は一定数存在しますが、多くの日本企業では、彼らもメンバーシップ型で処遇されています。本人はある領域で専門性を高めようとしているのに、それはあまり評価されず、ゼネラリストとしてどれだけ広い範囲で判断や意思決定ができるかで評価されてしまう。これはあまり合理的な処遇とはいえません。本来プロフェッショナルは、ある仕事について契約を結び、仕事の生産性や成果で評価されることを望みます。そのほうが本人の成長を期待できるし、会社としてもより高いパフォーマンスを期待できます。それなのにメンバーシップ型人材と同じ扱いをしていたのでは、本人にはスキルを高めようという動機づけも起こらないし、会社からの期待も分りにくくなる。事業の遂行に高い専門性が求められる中、そんな状態で、果たして国際競争を勝ち抜けるのでしょうか。──専門性を処遇する制度としては、複線型人事というものがかつてありましたね。複線型と呼ばれる人事制度は1980年代から導入されていましたが、これは管理職にならない人材に専門職という地位をあてがっただけのものでした。結局ゼネラリストを上位に置く社内ヒエラルキーに組み込まれ、「専門職よりも組織長のほうが偉い」という運用になってしまった。2000年代に入ると、社内のプロフェッショナル人材を定義したり、階層を作って段階ごとの育成プログラムを整備したり、しっかりプロフェッショナル人材を育てようという企業がようやく出てきました。──専門性をイメージする働き方として、プロフェッショナルのほかにスペシャリストという言葉もあります。違いはなんでしょうか。スペシャリストは語源をさかのぼると、仕事のある一部分だけを担当するという意味合いがあります。部分的に担特集日本型職業教育の未来日本的なメンバーシップ型企業は社内にプロフェッショナルを生み出しにくい組織構造にあるスペシャリストとプロフェッショナルの違いメンバーシップ型企業とプロフェッショナル(ダイバーシティ)型企業・人に仕事をあてはめる・新卒採用に軸足・職種を決めずに採用・単一な価値観、画一的な人材・より広い範囲で判断と意思決定できる人材(管理職)を評価・仕事のある一部分だけ担当・個性的でなくてもよい・数年経験を積めばなれる・仕事の正確さや効率、件数で評価される・仕事に人をあてはめる・中途採用に軸足・職種をある程度想定して採用・多様な価値観、多様な人材(プロは個性的)・自ら決めた分野で、専門性を高めた人材を評価・仕事の全体に責任を負う・個性的。プロの数だけ仕事がある・育成には長い時間がかかる。プロの道に終わりなし・顧客の想像を超えた提案で評価されるプロフェッショナルプロフェッショナル型企業スペシャリストメンバーシップ型企業
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