カレッジマネジメント203号
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27リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017職業教育について欧米諸国と日本とを比較した際、最も大きな相違点の一つは、大学院の果たす役割の大きさであろう。図表1は日米の経営層・管理職に占める大学院修了者の比率を比較したものである。日本においては企業役員に占める大学院卒の割合が5.9%に過ぎないのに対し、米国の上場企業の管理職においては人事部長相当職の6割以上、営業部長・経理部長相当職の4割以上が大学院を修了し、多くの管理職がPhDやMBAを取得していることが分かる。同じ指標での比較ではないとはいえ、日米のビジネスパーソンの「学歴」の状況が全く異なっていることは間違いないだろう。またヨーロッパにおいては、ドイツ・フランスをはじめ職業上必要とされる資格と大学・大学院の学位をリンクさせた制度を持つ国が多い。近年さらに、EU域内での人材の有効活用を目指して高等教育の学位認定の共通化が進められ、各国で質の向上に向けた取り組みが実施されている。職業教育におけるこうした欧米の状況を踏まえ、日本でも大学院が積極的な役割を果たすべく、2003(平成15)年度より創設されたのが「専門職大学院」である。修士課程より実践的な制度設計「専門職大学院」は、「科学技術の高度化、社会・経済・文化のグローバル化等により、社会が多様に発展し、国際的競争も激しくなる中で、これまでの知識・技術や発想、思考の枠組みだけでは認識できない問題や解決不可能な問題が多く生じてきている」(平成14年8月中央教育審議会答申「大学院における高度専門職業人養成について」より)との認識のもと、「様々な職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を可能にする新たな大学院制度」(同)として設計されたものである。「ビジネス・MOT」「公共政策」「臨床心理」等の現代的ニーズが高い分野の専攻に加え、法曹制度改革において法曹養成の中核となる教育機関とされた「法科大学院」が2004(平成16)年度から、教員免許制度の改革に伴い創設された「教職大学院」が2008(平成20)年度から加わった。専門職大学院は、<理論と実務を架橋した教育>を高い品質で実現するため、教員や授業方法、認証評価等について、制度上下記のように規定されている。【修了要件】・修士論文を必須としない特集日本型職業教育の未来専門職大学院の現状と社会人大学生の拡充に向けた課題学歴人事部長営業部長経理部長大学院修了61.6%45.6%43.9%四年制大学卒35.4%43.5%56.1%四年制大学卒未満3.0%9.8%0.0%取得学位人事部長営業部長経理部長PhD取得14.1%5.4%0.0%MBA取得38.4%38.0%40.9%アメリカ日本大学院卒5.9%大卒61.4%短大・高専・専門学校卒7.4%高卒23.6%中卒・小卒1.7%日本の企業役員等の最終学歴(従業員500人以上)米国の上場企業管理職等の最終学歴※日本労働研究機構が実施した「大卒ホワイトカラーの雇用管理に関する国際調査(平成9年)」図表1 企業役員等の学歴についての日米比較乾 喜一郎リクルート『社会人&学生のための大学・大学院選び』編集長● PROFILE1967年大阪市生まれ。リクルート入社後は一貫して、進学・就職・転職といったキャリアに関する領域に携わり、2006年より現職。社会人大学院生や資格取得者など、これまで取り上げてきたライフヒストリーは3000例に及ぶ。専門職大学院については、同誌および同じく編集長を務める『法科大学院入試ガイド』で制度創設時より学び手の視点から紹介。社会人の学び直しに関する専門家として、文部科学省ほか各種有識者委員を務める。専門職大学院設置の経緯※総務省「就職構造状況調査(平成19年度)」

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