カレッジマネジメント203号
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30リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017員、「一般」の公共政策分野に進む現職公務員、公衆衛生分野へ進む医療従事者、ビジネス・MOT、あるいは知的財産分野に入学するビジネスパーソンといった顔ぶれである。管理職もしくはその候補者が多く、金銭面・勤務面で所属組織からの配慮があるため、進学の際の課題は小さい。ただし、リーマンショック後に企業の教育研修費が大幅に圧縮されて以降回復していないため、企業・組織派遣の学生数は減少傾向にあると想定される。一方、自費負担の社会人学生はビジネス・MOT分野に多い。自らのキャリアデザインに基づき進学するこの学生層が増えていることが、ビジネス・MOT分野の入学者が増加傾向にある要因といえるだろう。「これまでがむしゃらに営業成果をあげてきたが、より普遍的なマーケティングを学びたい」「開発環境を支える立場となり、技術経営能力を体系的に身につけたい」といった、自ら成長のステージを求めての入学である。決して安いものではない学費に加え、学習のための時間を確保し「柔軟性」「人を巻き込んでいくリーダーシップ」「自己管理」「行動力」といった、いわばコンピテンシーに関するポイントを挙げる傾向があるのも特徴である。さらに、こうしたコンピテンシーが鍛えられる熱い場を共にすることで「同じ志を持つ一生の友が得られた」というコメントも得られる。ただし、これらは決して専門職大学院に限定されたことではない。自費負担で入学する社会人の学び手にとっては、取得できる学位に拘わらず、自らのキャリア課題に応じた教育内容と教育方法を取っているかどうかが重要なポイントである。 学ぶ側から見た課題~費用・疲労・時間大学院入学者、及び検討者に進学を阻害する要因を問うたのが図表5労力を投入するため非常に意欲が高く、学習効果も高いのが特色といえる。以前は30歳を前にしたリーダー予備群といえる層が多かったが、近年は30代・40代も増加している。彼ら・彼女らに「大学院で得たものは何か」と問うと、専門知識・スキルはもちろんだが、「自ら学び続ける意欲」や「視野の広さ」「明確な将来像」2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度一般ビジネス・MOT83.0%85.3%87.9%88.4%89.9%会計31.0%33.2%38.9%43.6%42.2%公共政策38.7%37.4%40.4%37.3%35.8%公衆衛生63.9%66.7%75.8%74.7%84.5%知的財産30.1%31.9%35.2%43.1%41.5%臨床心理23.3%20.4%15.8%18.2%18.6%その他37.9%37.8%40.5%37.4%43.3%法科大学院24.5%23.7%22.5%22.1%21.8%教職大学院46.3%45.0%44.9%45.4%47.1%※社会人:在学生のうち、現に職に就いている者(企業退職者、主婦なども含む)※文部科学省中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループ発表資料より図表4 在学生に占める社会人比率(分野別)図表5 社会人の学習を阻害するハードル※リクルート『社会人・学生のための大学・大学院選び』が2015年に実施したインターネット調査 サンプル数 進学者N=323 意向者N=1000 進学者:大学院に進学したことがあると答えた者 意向者:大学院への進学に興味がある、検討したことがあると答えた者のうち、進学していない者01020304050607080(%)学習費用がかかる仕事での疲労勉強する時間の不足授業時間帯や曜日が合わない残業などによる欠席通学が不便(立地の悪さ)受験準備の負担の大きさ職場での理解不足在籍期間が長い実務に役立ちそうな内容がないその他全体71.661.964.740.937.426.325.118.211.13.41.2進学者61.061.361.036.829.124.518.915.810.83.10.9意向者72.859.963.139.637.523.524.016.110.23.31.1

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