カレッジマネジメント203号
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33させる必要があり、その最も有効な方法論として「理論と実践の有機的結合」を挙げている。教育の生産性を「学修成果」と「学修期間・学修労力・学修費用」との関連から捉え、その向上には教育投資の概念を持ち、高付加価値教育を施す必要があると言う。しかし、「大学等での教育はあくまでも自己実現を図るための手段であり、目的ではないはず。時間やお金を効率良く活用し、社会で役立つ教育の高生産性が必要ではないか」とその現状については疑念を抱いている。「教育の目的不在で手段ばかりが叫ばれるが、職業教育は産業社会のインフラであるべき。目的意識もないまま高等教育を受けて就職できないような若者を輩出するのではなく、職業教育にシフトさせることで社会の安定が図られ、雇用も創出されるだろう」という信念がその根底にはある。また、就職後のキャリアチェンジという点からも教育生産性が求められると言う。バブル景気崩壊以降、終身雇用制度が揺らぎ始め、労働者の就労観にも変容が見られる。学校を卒業した後、同じ企業に定年退職まで勤め上げるというキャリアではなく、社会変動に即したキャリアチェンジを重ねていくケースは、今後ますます増えていくだろう。そのためには学校での学び直しが必要になる場合もあるが、キャリアチェンジのために2〜3年も通学することは難しい。「だからこそ、教育の生産向上性をあげる必要がある。職業教育は年限にこだわらず、アメリカのように飛び級制度や単位制も取り入れるべきではないか」と山中理事長は提言する。こうした理念は、メイ・ウシヤマ学園の学校経営モデルにも反映されている(図表1)。かつて美容講習所として社内に自前の研修部門を置き、先輩の真似から始まり10年かけて習得させていたことを、美容専門学校として教育カリキュラムをシステム化することにより1〜2年で習得できるように、即ち教育の生産性を向上させることにより、職業教育体系と社員教育体系の連続性を高めようとする仕組み(ジョイントプログラム)である。専門学校においても大学院大学においても、理論と実践を有機的に結合させ、教育生産性を重視した多様な年限のコースが設置されている。技術と経営を結合させる専門学校+大学院大学教育山中理事長は、現在の日本の職業教育、とりわけビューティビジネス教育の課題の一つとして、「技術者を活かす経営者の不在」も挙げている。日本の美容技術は世界一なのに、そこに付加価値を付けて価値を増幅できる経営者がいないのは非常に残念なことだと言う。サービス業の雇用シェアが75%を占める今、優れた技術を有する専門職人材を活かす経営者を育成し、技術と経営を両輪とした職業教育を推し進めることが重要である。これまでは現場上がりの経営者が主流だが、必ずしも良い技術者が良い経営者になるとは限らず、また自ら技術を持たずとも人の力を引き出しマネジメントすることは可能であり、専門的に経営者としてのスキルを学んだ専門経営者が求められていると言う。そこに、専門学校と大学院大学の一貫教育体制の意義がある。メイ・ウシヤマ学園では、専門学校の高度専門課程及び大学院大学ビューティビジネス研究科により、「技術」と「経営」を有機的に結合させた教育カリキュラムを整備している(次頁図表2)。ハリウッドビューティ専門学校の高度専門課程では、美容界のリーダーを目指し、高度なヘア・メイク・ネイル・エステ・美容健康食・着付のトータル美容の専門科目、さリクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017図表1 メイ・ウシヤマ学園の学校経営モデル特集日本型職業教育の未来

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