カレッジマネジメント203号
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39リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017(白川優治 千葉大学国際教養学部 准教授)成立するかを検証することを実践的に取り組む。この経験を通じて、使い手の視点を持ったICT技術者となることができる」と炭谷学長は話す。この取り組みは、国際協力機構(JICA)の目に留まり、2012年、ICT技術を使って社会課題の解決を目指すコンセプトのもと、アフリカ8カ国の政府高官や産業人材ら30人程度を対象とする6週間の研修プログラムを提供した。同研修を受けたルワンダからの起業したばかりのITベンチャーの女性起業家が、本研修で学んだことを活かし、帰国後事業を成功させたことが、ルワンダや日本でも大きな話題となっている。彼女は研修で学んだことを今でも若者に語り継いでおり、後進の育成に力を入れている。また2015年度に彼女はアメリカ・フォーブス誌でアフリカを代表する起業家の一人に選ばれるなど、具体的な成果が出始めている。この実績を活かし、実務経験とICTスキルを有し、英語でわかりやすく教えることができる能力を持つ教員を揃え、2013年10月から、英語のみで学位の取得を可能とするICTイノベーターコースを新設し、留学生の受け入れを進めることとした。このコースは、初年度の入学者は6名であったが、翌年には36名に増えた。この取り組みは、我が国の成長戦略・外交方針にも重なっていく。2013年6月に横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)で、安倍首相は、5年間で1000人のアフリカの若者を日本に受け入れ、高等教育や企業インターンシップを提供する「ABEイニシアティブ:African Business Education Initiative for Youthアフリカの若者のための産業人育成」を表明する。他の大学に先駆け、既に前述の研修プログラムで高い評価を得ていた神戸情報大学院大学に、多くのアフリカ人から留学希望が寄せられたのである。こうして神戸情報大学院大学は、JICAと密接に連携し、ABEイニシアティブのもと、積極的にアフリカ人留学生を受け入れる方針を定めた。このような神戸情報大学院大学の社会課題をICT技術によって解決する人材育成は、2016年8月にケニア・ナイロビで行われた第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)でも日本政府によって代表的取り組みとして大きく紹介されている。これまで、世界50カ国以上から留学生が訪れ、国際的な環境の中で専門的職業人材の育成が行われている。日本人学生にとっては、日本にいながら多様性を身につけることができるユニークな環境となっている。他方、ABEイニシアティブは、アフリカの若者の育成であるとともに、日系企業のアフリカ進出の水先案内人として活躍してもらう人材を養成する目的もある。現在、神戸情報大学院大学はICT技術立国を進めているルワンダとの関係を深めており、JICAと連携した留学生の戦略的な受け入れを通じて、学校が所在する自治体である神戸市のアフリカ諸国との国際交流政策にも共同で取り組んでいる。企業からもアフリカビジネスへの展開の問い合わせや共同事業の提案を受けるようになってきた。アフリカ人学生、日本企業、大学、自治体、国際機関が協働によってアフリカの社会課題解決を目指すプロジェクトが数多く動いており、大きなインパクトをアフリカに与える可能性のある事例も出始めている。ICT技術を用いた社会課題の解決という実践的な職業能力を育成する神戸情報大学院大学の人材育成が、日本企業のアフリカへの進出を促進し、国際交易の中心都市として地域活性化を進める行政の活動を推進しているのである。情報技術の変化スピードに挑戦する神戸電子専門学校と神戸情報大学院大学の2つの学校に共通する特徴は、社会のニーズを柔軟に満たすために、教育プログラムの新設や見直し、新しい挑戦に積極的に取り組んでいることにある。職業教育は変化する社会ニーズに対応していかなければならない。特に、情報技術は変化のスピードが速く、変化の幅も大きい。社会のニーズを満たす職業人を技術教育を通じて育成してきた学園創設時の特徴は、建学の理念として現在運営する2つの学校にも引き継がれている。そこには、技術を教えるだけの教育ではなく、創造性や課題解決に情報技術を活用する、社会を発展させる力を持つための職業教育が目指されている。社会の変化を受動的に対応するのではなく、教育機関の側が理念をもって社会変化を作りだす職業人材育成を進めている2校の特徴は、これからの職業教育を考える上で重要な示唆となるだろう。特集日本型職業教育の未来

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