カレッジマネジメント203号
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58リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、昭和音楽大学で、簗瀬進学長と、GP・AP等を含むキャリア支援に携わってきた酒巻和子教授(短期大学部 音楽科長)、武濤京子教授(キャリアセンター長/音楽学部 音楽芸術運営学科)及び香月菜麻(学務部キャリア支援室室長代理)にお話をうかがった。舞台を創るトータルとしての音楽2016年度に就任した簗瀬進学長は、「昭和音楽大学の歴史は、音大もしくは音楽そのものが置かれた社会的環境の変化に対応していくため、日々の改革を続けている」と語る。今大きな社会環境の変化といえば、1つは女性の社会進出だという。女性の就業が当たり前になった結果、卒業後のキャリアをどう保証していくかということを、音大もメインの課題として取り組まざるをえなくなった。この背景の下、かなり意識的にキャリア支援の取り組みを進めてきたという。音大生のキャリアといえばまず浮かぶのは音楽家・演奏家だ。しかし簗瀬学長は、舞台を企画する人、広報・宣伝をする人、照明や音響スタッフ等がいて初めて成り立つトータルなものとして「音楽」を捉えたいという。この捉え方をすると、音大の教育の可能性を、キャリアの視点で積極的に拡大することができる。舞台に立ってスポットライトを浴びる人だけでなく、陰で舞台を支える人材までを音楽教育の対象とする視野だ。例えば音楽芸術運営学科アートマネジメントコースの学生は、公立文化施設等の企画や運営職等で「音楽」を創る仕事に、舞台スタッフコースの学生は、照明や音響等のスタッフが主な進路となる。つまり、昭和音楽大学のキャリア支援の取り組みには、後述のキャリアセンターやキャリア科目等と同時に、コースの拡大(学科再編)があるといえる。コースの数は2017年度に5つが新設されて21のコースとなる。昭和音楽大学の建学の精神は「礼・節・技の人間教育」。簗瀬学長は「礼・節・技というのは音楽の本質であると同時にキャリアの本質でもあるのではないか」と言う。「例えば、『礼』はもちろん礼儀の礼ですが、音楽でいうと基本的なルール❻昭和音楽大学幅広い視点で音楽を捉え、多方面で活躍できる人材を育成簗瀬 進 学長

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