カレッジマネジメント203号
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60リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017題として考えることができました」と語る。合同FDの授業見学も有意義だったという。音楽大学ならではの悩みと強み「産業界ニーズ事業で他大学を訪れて一番感じたのは、他の一般大学といわれるところは、卒業したら就職するものだと、多くの学生達が考えているということでした」と酒巻教授は言う。簗瀬学長は「音楽大学に入学する学生は、自分の音楽で高みを目指したいのですよ。みんな舞台の上に行きたい」と指摘する。早期からキャリアを考えさせようと、1年生や2年生で「プロはとても無理だからバックアップする側に行きなさい」「一般企業への就職を目指しなさい」等と頭ごなしに言えば、かなり精神的ショックを受ける学生もいることは想像に難くない。器楽・声楽等の実技系のコースと、アートマネジメント等の音楽を支えるコースでは志向性が違い、実技系の学生は、時間が許す限り自分の演奏技術の研鑽に努めたいと考える。卒業間際になっても将来の方向性が固まらず支援が必要になる場合もある。大学側としても支援しにくい面がありそうだが、武濤教授は「多様なニーズに対応して、学生自身が気づいた時に、手を伸ばせば支援や情報なりがあるというふうにしたいと思っています」と言う。大学・短大あわせて1学年400名弱という小規模な大学だからできるという面もありそうだが、二人の教授は「学生一人ひとりが浮き出て見える」「そこに対応するという意味では、一般大学とはちょっと違う」と言う。一方でここ数年、自立したい、自立は必要だという意識が学生の間にも広がっている。「音楽だけで生計を立てるのは難しいが、アルバイトや拘束されない仕事に就いて、演奏活動を継続していきたい」という志向の学生が、実技系のコースを中心に多いが、昨今「社会的経済的に自立し、その中でできる範囲で好きなこと(音楽)を精一杯やる」というキャリア観を持つ学生が少しずつ増えてきたという。演奏家やアーティストの夢を追ってキャリア構築のスタートが遅れがちなのは音大生の弱みかもしれないが、逆に強みもある。簗瀬学長は、音大生の強みを「まず豊かな感性と表現力です。また、個人レッスンを通じて礼儀を身に付けていますし、とにかく“出来るまでコツコツやる”という努力も“出来たときの喜び”も知っています」と言う。簗瀬学長は「一般大学の学生と比べても、社会に出た際の競争力は相当高いレベルだと思うのです。高い協調性を持っていたり、自己アピール力があったり、自己管理能力もあれば、目的意識も高いものを持っている」と言い、学生本人がそれに気づいていないために強みを生かせていないとも言う。音楽教養コース新設と基礎ゼミの導入2017年度、大学に4つ、短大に1つのコースが新設される。そのうち特に「学ぶと働くをつなぐ」に関連するのが、今まで短大にだけあった「音楽教養コース」の大学への新設だ。音楽が大好きで、将来は演奏家以外の形で音楽に関わりたい学生が、実技も学びながら、音楽を生かして「何かがしたい」という想いから、興味があるものに触れることのできる、選択肢がとても広いコースだという。「ここを出たら、汎用的能力も高く、音楽の知識も豊富で、音大卒としてどこへ出しても恥ずかしくないコースということを夢見ていて、カリキュラムもそれなりに複雑ですけれども、楽しみなコースです」(酒巻教授)「就業力育成支援事業」で始まった「音楽人基礎①」のリニューアルも行われる。科目名が「基礎ゼミ」と変わり、大学・短大ともに1年生の全学必修になる。「音楽人基礎①」の内容に、汎用的能力を身につける「総合教養」科目の内容、さらに新入生オリエンテーションも加えて、「初年次教育として本学で学ぶ意味から、自分を見つめるということ、そしてキャリアにつなげるところまで。かなり欲張った科目になっています」と酒巻教授。簗瀬学長は「社会の様々な分野で活躍している卒業生情報の収集と活用度アップが今後の課題と考えている。データベースで探すことが出来るような仕組みにはなっていない。本学の資産と言えるものを見える化し、有効活用できる取り組みができたら、新しいキャリア支援の形につながっていくと思います」と話す。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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