カレッジマネジメント203号
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66法人化から13年が経過した今、国立大学の現状や先行きに危機感を抱く声が急速に高まりつつある。ネット上では、人件費抑制のための定年後補充凍結などの話題が飛び交い、国立大学をめぐる問題に関する報道も目立つようになってきた。国立大学の法人化は、国の行政改革に連動して推進されながらも、大学という機関の特質を考慮し、大学改革を促進するという観点から、国立大学法人法という固有の法律に基づいて法人格が付与された点に大きな特徴がある。文部科学大臣としてその制度化を主導した遠山敦子氏はその著書『来し方の記』(かまくら春秋社,2013)で、「国からの運営費交付金は『渡し切り』(使いみちを定めず支給される)で使途の内訳は特定されず、さらに翌年度への繰り越し可能、自己努力による余剰金もほかに充当できることをはじめ、内部組織、財務・会計、人事などの多くを大学側の裁量に任せることになっている。また、公務員型ではなく、非公務員型にしたことに伴い、教員の兼職・兼業も法人の意思で可能となり、採用、任期、給与などの裁量も大幅に認められ、大学としての人事の在り方が格段に自在となった利点も大きいであろう」と述べている。また、「この二十一世紀はじめの大改革は、大学人の意識と努力さえあれば、加えて十全な財政的支援があれば、この国を再生できる知の拠点として実力を発揮してくれるものと考えている」と強い期待を示している。こうしてスタートした国立大学法人において、冒頭に紹介したような危機感が増しつつある背景に如何なる問題があるのか、本稿ではその現状を整理しながら、国立大学を本来の改革軌道に再び乗せるための課題について、組織運営面を中心に検討する。教育格差拡大・研究力低下・若手人材育成の危機最初に、国立大学関係者が抱いている危機感について、公表された文書や発言から、具体的な内容を確認しておきたい。2015年11月、国立大学協会は公立大学協会、日本私立大学団体連合会との三団体連名で「国家予算における国公私立大学の基盤的経費拡充に関する要望書」を財務大臣に提出している。その中で、「基盤的経費の削減による弊害が看過できなくなってきており、家庭や学生の経済格差拡大が教育機会の格差に繋がりかねず、我が国大学の研究力の低下、各大学の先進的取組が頓挫する懸念が高まっている」と述べ、教育格差拡大の危機、研究力低下の危機、若手人材育成の危機の3つの危機を強調している。西尾章治郎大阪大学学長は、「論文生産をめぐる各種データが示すとおり、大学の研究力の停滞は研究への投資やマンパワーの在り方などに起因するところが大きい。特に、学術研究の本質である研究者個人の自由なボトムアップ研究を支える研究費の減少は看過できない」と述べ、運営費交付金の削減が限界にあることを強調している(日本経済新聞2016年10月3日朝刊)。大学を強くする「大学経営改革」国立大学の機能を持続・発展させるための組織運営上の課題について考える吉武博通 筑波大学 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 201769世紀の大改革の法人化と近年急速に高まる危機感
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