カレッジマネジメント204号
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11リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017果たすための手段となってしまったこともその一因である。認証評価で良い評価をもらえるようにと、自己点検・評価によってPDCAがうまく機能しているというストーリーの報告書作成が優先されてしまっているのである。認証評価機関は、自己点検・評価を実質的に機能させるためには、新たな仕掛けを作ることが必要となった。それが内部質保証である。自己点検・評価がうまく機能していたとしたら、内部質保証という仕掛けは持ち出さなくてもよかったのではないだろうか。認証評価が必ずしも大学の改善につながっていないとする理由について、いくつかのケースを見てみよう。①最初の認証評価では分からなかったが、認証評価が2巡目になったことで、自己点検・評価の頻度が減り、認証評価の前にしかこれを実施しない大学が少なからずあることが顕在化してきたこと。②認証評価の前年に、いわば予行演習として、認証評価機関への提出書類の前年度版で外部評価を受ける大学があること。③毎年度、学部・研究科等ごとに達成目標を明示した詳細な評価シートを用いて自己点検・評価を実施しているが、その活動が形骸化してしまっているか、評価疲れになっている大学があること。もちろん、上記のような自己点検・評価活動や外部評価を行っていてもそれらが有効に機能している大学もあるだろう。しかし、①のケースは、最初に義務化された自己点検・評価は、法令には明記されてはいないものの、毎年実施することが望ましいとされていた。従って、自己点検・評価を頻繁に行っていた大学もあったが、認証評価が義務化されたことで、かえって自己点検・評価が行われなくなってしまったというものだ。②のケースについては、機関別認証評価では各学部・研究科等で行われる教育の検証まで行うには限界があることから、認証評価とは異なる観点での外部評価によって大学が自身の教育の質を担保することが望ましいのだが、認証評価と全く同じ内容の評価で外部評価が行われていると、せっかくの外部評価があまり効果を発揮しないということになる。①②とも認証評価に無事に合格できることが自己目的となってしまっている点で、認証評価の本来の目的が果たせていない。こうしたケースでは、認証評価が終わるとその後の4〜5年は自己点検・評価は等閑視されてしまい、次の評価の1〜2年前に慌ただしく自己点検・評価が開始されることが往々にしてある。③のケースは、各学部・研究科等が毎年度実施する自己点検・評価がどの程度詳細なものかによるが、評価しただけで終わってしまったり、前年とは関連なく毎年新たな目標を設定することで評価の連続性がない等の問題がある。評価結果を大学全体としてどう改善につなげるのかが示されていない場合は、認証評価にもその成果は活かされないということにもなる。負担の大きさと効果についての検証はぜひとも行うべきである。このように内部質保証の重要性は、文部科学省よりも、先んじて自己点検・評価に基づく認証評価が大学の改善に真に役立っているのかという危機感を強く持った認証評価機関から発信されたといっても過言ではない。大学関係者の中には、やっと自己点検・評価の組織体制が整備され活動が定着してきたのに、さらに内部質保証に取り組まなければいけない、一体何をすればよいのかと戸惑う向きも少なくない。中教審答申として初めて内部質保証に言及した「学士課程の構築について」も、自己点検・評価を運営する体制としてしか内部質保証を説明していない。内部質保証に関しては、大学基準協会や大学改革支援・学位授与機構が海外の制度の照会や、評価機関固有の定義等の公表を通して大学への浸透を図っているので、大学はこうした情報を積極的に収集されることが望まれる。本稿では、内部質保証の方法論ではなくアメリカとヨーロッパの評価の違いから自己点検・評価と内部質保証の違いについて考えてみたい。特集認証評価第3サイクルに向けて自己点検・評価と内部質保証は何が違うのか4

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