カレッジマネジメント204号
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13リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017部等が思い思いの評価をやるだけで終わってしまう。また、学部等の専門性に配慮せずにトップダウンで一律の質保証の枠組を設定するとすれば、矢印は大学から一方的に学部等に伸びるだけで、必ずしも良い成果が得られず、大学の質の向上につながらない。それでは、この2つのサイクルを有機的に結びつけるのは、アメリカの大学ではどのような人物に託されているのだろうか。IEオフィス等の大学の質保証を担当する組織は、多くの場合、教学担当副学長のもとに置かれている。大学の規模にもよるが、組織といってもほんの数名である。学部・学科等の教育組織との対話の中で、自らが開発した学習成果の測定方法等の提案等を行う。ここで肝心なのは、管理者側である副学長と教育組織の中心的な教員(学科長や学部長ではない)との良好な関係を構築することである。やはり現場の教員が納得しなければ、有効性の測定などうまくいくはずはない。もうひとつ大切なことは、プログラム全体の評価のための学習成果測定を、教員の個人評価に使用しないことだ。管理者側が教員を尊重し、教員も納得して質保証に取り組む。そう簡単なことではないかもしれないが、これによって構成員の「意識改革」を促し、「質の文化」の醸成にも通じていくものとなるのではないだろうか。アメリカでもトップクラスの研究大学のIEオフィスの担当者の話では、学習成果の評価が教員に受け入れられるのに10年かかったとのことである。第3サイクルの認証評価では、内部質保証が重視されることで、大学が自己点検・評価する領域やそこで用いられる評価方法は、第2サイクルより自由度が増すだろう。その代わり、評価の結果として様々なエビデンスを提出しなければならないだろう。このことが大学にとって徒労に終わり、新たな評価疲れを引き起こすことのないよう、認証評価機関には、まず、内部質保証システムの構築のための情報提供や助言といった役割を担ってほしい。特集認証評価第3サイクルに向けて3年~4年周期6年~8年周期学部等の組織の自己点検・評価中期目標に基づく全学的評価中期目標に基づく全学的評価目標の設定中間評価目標の最終評価目標の実行図2 内部質保証における大学と部局の関係(例)

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