カレッジマネジメント204号
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21リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017てきたと言えるだろう。米国のIRの発展過程を整理すると、表1のようになる。大学内にあるデータのみならず外部のデータを整備する機関が自立的発展段階の起点とすれば、次に、政府関係データベースの整備と個別機関のデータベースの接続が更なる自立的発展への道筋となる。大学のIR組織が内部データと組み合わせて利用できるような全国データを整備している米国のNational Science Foundation(NSF)やNational Center for Education Statistics(NCES)のような統計機関に相当する機関は、データベースとしては「大学ポートレート」が始動したが、機関については日本では整備されていない。様々な政府統計関連のデータベースを使用し、大学内のデータと連結することで、個別の学習成果のみならずよりベンチマーキングにもとづいた学習成果の可視化が可能になる。日本における認証評価制度との連携においては、現在内部質保証の充実が個別機関で求められ、例えば学習成果の把握についてもIR組織がより関わっているとみられることから、今後の認証評価の第三サイクルでは加速することが予想される。そうした第三サイクルの認証評価に向けて、政府関連のデータベースと大学内のデータを連結することにより、充実したデータを提示できる可能性があると思われるが、まだその段階には達しているとは言えないのではないだろうか。統計機関やデータベースの整備が望まれる。表2には日本のIRの発展段階を示している。日本では、政策との親和性というよりは、むしろ政策主導でIRが急速に拡大してきている。それ故、他律段階における政策主導による・情報公表の義務化、高等教育予算削減、IR組織の設置や機能について競争的資金への組み入れ、全てが当てはまる。自立への起点段階と自立的発展段階に挙げている各政策も日本の現状において進捗している。しかし、急速に発展してきたIRが専門職として定着していくのかどうかを予想することは簡単ではない。IR人材の専門性に基づくアイデンティティ形成以前に、政策との親和性を前提とした実用性が求められていることは明らかではある。そうした日本のIRが市場の形成も含めた自立的発展へと向かっていくためには、専門性の確立と政府統計機関の整備と各機関のIR部門との連携、さらには、学会や関連団体等中間組織との連携による継続的な人材育成プログラムの開発と提供が不可欠であろう。政策面からは他律段階から自立への起点段階、そして自立的発展段階へと進んでいるが、他の側面においても両段階へと進んでいくためには、専門性の模索、方法論の模索と技術の向上、それらをベースにして専門性を確立し、IR市場を拡大していくことが前提条件と言えるだろう。認証評価の第三サイクルにおける学習成果の可視化は、一見すると教学IRだけに限定されるように見えるが、実際には政府の統計や処々の外部データベース、内部でのデータのリトリーブと統合といった総合的なデータの活用と技術が絡み合っている。その意味では、総合的なIRを進捗させることも日本が直面している重要課題である。表2 日本のIRの発展過程日本他律段階自立への起点段階自立的発展段階政策●政策主導(例)・情報公表の義務化・高等教育予算削減・競争的資金への組み入れ・明確なアウトカム志向政策へのシフト・恒常的高等教育予算削減・アウトカム志向政策・恒常的高等教育予算削減・グローバル化とランキング対応政策制度機関・IR部門の設置・IR人材の配置・学内での認識の広がり・教学部門と経営部門の連携IRアクター・データの収集と整理・データベースの整備・教学IR開発特集認証評価第3サイクルに向けて

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