カレッジマネジメント204号
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32東京女子大学は、1918年に「キリスト教の精神に基づいて女子に高等教育を施すことを目的とする」という建学の精神のもと、リベラル・アーツ・カレッジとして創立された伝統校である。現在は現代教養学部の一学部体制で、学生数が約4000名の中規模大学である。伝統的なイメージが強かったが、今回の取材を機に大学のウェブサイトを丹念に調べるなかで、一歩ずつ着実に改革を進めている姿に感銘を受けた。東京女子大学の教育改善のための取り組みについて、小野祥子学長にお話をうかがった。グランドビジョン策定とそれに基づく改革小野学長は2014年に着任してすぐ、100周年を迎える2018年に向け、グランドビジョンと大学として育成する人物像を作成した。方向性を持たないと改革を進めるのが難しいからだという。東京女子大学は、自立した女性を育てることを目標に、リベラル・アーツ大学として設立された。この原点を踏まえて、その理念を現代に生かすものとして、8つのグランドビジョンと、それに基づき、5つの観点から大学として育成する人物像を作成した(図表1)。専門性を持った教養人を育てる点は従来と変わりがないが、それに加えて、現代社会の変化に対応するべく、知力を行動力にするよりアクティブな女性、国際的視野を持った女性、自分でキャリアをカスタマイズできる女性、高度情報化社会に対応できる女性という観点を掲げた。こうした観点に基づき、教育改善につなげる努力をしている。その1つが、2018年度の学部体制の変更である(図表2)。実践的学びという視点から、コミュニティ構想専攻を新たに設置し、まちづくりから行政まで、女性目線の政策提言をできる人材を育てる。また、国際化の推進には英語力の向上が不可欠だが、これまで2学科2専攻で行ってきた教育を国際英語学科1つにまとめた。従来も行ってきた文学、英語学、英語教育等に加えて、英語キャリアコースを新設し、学生が希望すればより実践的な分野も学べるようにする。この専攻では、2年次後期には原則半年間の留学が必修となっている。また、受験生からの要望の高い心理・コミュニケーション学科も新設する。こうした専攻の改組だけでなく、全ての専攻において、育成する人物像に基づいた教育改善をさらに進める。例リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017ビジョンに基づき課題を改善するPDCAサイクルの恒常化小野祥子 学長東京女子大学C A S E2①キリスト教精神に基づき、人類・社会の問題解決に貢献する女性を育てる。②グローバル化・高度情報化した21世紀の社会を切り拓き、国際社会で活躍する女性を育てる。③教育内容・教育方法の改革に取り組み、主体的に学ぶことを学び、学び続ける姿勢をもった女性を育てる。④「専門性をもつ教養人」育成の原点である本学のリベラル・アーツ教育を、現代社会に活かす形で充実させる。⑤女性の自己確立と、女性の生涯にわたるキャリア構築を支援する。⑥ステークホルダーとの関係を強化し、社会との結びつきを強め、社会から支持される大学を実現する。⑦学習環境を整備し、現代の高等教育機関にふさわしい施設・設備を確保する。⑧財政基盤を強化し、教育・研究を支える基盤を強める。東京女子大学グランドビジョン1知力(知識)を行動力にするリーディングウーマン2国際的な視野をもった地球市民としての女性3専門性と幅広い教養をもった女性4キャリアをカスタマイズする女性521世紀の高度情報化社会に対応できる女性大学として育成する人物像※大学HPより編集部作成図表1 グランドビジョンと育成する人物像の定義

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