カレッジマネジメント204号
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33えば、実践的学びを取り入れるために、全専攻でアクティブラーニングやPBL型授業を導入し、特に高大接続の意味でも1年次に必ずアクティブラーニングを提供することとした。学生自身が自分の英語力強化につなげられるようTOEFL® ITP テストを入学時と2年次の終わりに、大学の負担で全員が受験しているが、学部改編後は英語科目の必修を増やし、全専攻で英語による授業を導入する。また、それぞれの専攻で、女性とキャリアについての科目を新設し、各専攻での学びがどういうキャリアに結びつくのかを学ぶという。課題を改善に確実につなげる仕組み矢継ぎ早に展開しているこうした改革がどのように実現できたのか。それは、大学としての課題を改善につなげる仕組みを作り、それを機能させている、いわゆるPDCAサイクルをきちんと回すことができたためと考えているという(次頁図表3)。どの大学でも行っていることではあるが、まずは各部署で自己点検・評価活動を継続的に、熱心に行っている。東京女子大学の優れた点は、そうしたものを点検しっぱなしにせずに、自己点検・評価委員会とやり取りし、見直すことで、課題や足りない点を明確にし、将来計画推進委員会に提案・報告している点である。学長が委員長を務める将来計画推進委員会で改善策を検討し、各部署でより具体的な改善案を検討するように指示する形で、PDCAサイクルを機能させているのである。このように2つの委員会が連携することで、教育改善がスムーズに進む仕組みを整え、足りないところを皆で意識して取り組んでいることが改革に着実につながっている。例えば2009年の認証評価では、6カ月以上の長期留学が少ない課題が指摘されたが、こうしたプロセスで検討し、国際英語学科の新設と半年間の留学の義務付けによる送り出しの増加、国内の日本語学校の推薦指定制度による留学生受け入れ開始という形で、問題点の解消につなげている。このサイクルを回すうえで、東京女子大学が1学部1キャンパスという利点は大きい。教授会も1つで、学長も出席しており、全教員で情報を共有できる。そのうえで、教職員の協力を引き出し、全学で教育改善につなげるように、FD・SD活動にも力を入れている。FDは教授会が終わった後に、原則全員参加で行う。アクティブラーニング、国際化等の議論では教員の抵抗も一部あったそうだが、テーマに応じて適切な講師を呼んで、2回3回と話を聞くなかで、徐々に協力者が増えてきたという。職員のSDも夏休みに研修等を実施しているほか、教員FDにも参加可能な職員は参加することで、大学全体で教育改善に取り組めるように努めている。ファクトとビジョンの両方が不可欠改革を進めるうえで、ファクトとビジョンの両方が大事で、どちらかが欠けていてもだめだと学長は強調する。確かにエビデンスなしの改革は的が外れる恐れがあり、ファクトは重要であろう。2014年度AP事業「テーマⅡ 学修成果の可視化」に申請し、採択されたのもそうした流れから必然であったと言える。在学生(TOEFL® ITP・汎用能力テストPROG、学修行動調査等)、卒業生、企業への調査とその分析を通じて、目指すべき人材養成の目的達成度を客観的に測定し、可視化することで、教育改善につなげている。2016年には学長直属組織としてIR推進室を設置した。大学のウェブサイトには、学修行動実態調査の報告書も掲リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017特集認証評価第3サイクルに向けて※黄色は新設。ほかも名称変更・定員変更等あり。 ※大学HPより編集部作成学部学科専攻募集人員入学定員現代教養学部国際英語国際英語155155人文哲学40200日本文学85歴史文化75国際社会国際関係100270経済学70社会学50コミュニティ構想50心理・コミュニケーション心理学80195コミュニケーション115数理科数学3570情報理学35学部学科専攻募集人員入学定員現代教養学部人文哲学35345日本文学100英語文学文化125史学85国際社会国際関係105225経済学55社会学65人間科心理学80260コミュニケーション95言語科学85数理科数学3060情報理学30●2017年度まで(人)●2018年度以降(予定)(人)図表2 2018年度からの学部学科体系

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