カレッジマネジメント204号
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36グローバル化の進行とともに、大学教育においても国際水準での質保証が求められるようになっている。グローバル化は人のモビリティ(越境移動)を高めており、大学教育もそれを前提に形成され、学習者は国境を越えて学ぶようになりつつある。そこで問われるのがそれぞれの大学が提供する教育の「質」だ。大学教育の質が担保されているか否か──世界中から学習者の厳しい目が注がれる時代が到来している。では、優秀な学生を集めたいと考える大学は何をすべきか。そのヒントを立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の事例に見ていきたい。APUは2016年8月、学部・大学院のビジネス教育を担うスクールの認証評価機関AACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)から国際認証を取得し、国際通用性の高い教育体制の構築に向けて大きな一歩を踏み出した。AACSB取得は、これまでのAPUのグローバル教育、そしてその質保証をどう変えていくのだろうか。大分県別府市のAPUを訪ね、吉松秀孝副学長(教学部長)、大竹敏次国際経営学部学部長にお話をうかがった。アジア太平洋地域をリードする国際大学としてAPUは1995年に構想され、大分県、別府市、学校法人立命館の公私協力の下で2000年に開学した。直前の1998年にはアジア通貨危機を経験しているものの、何とかそれを乗り越えた。「21世紀はアジアの世紀」──そんな未来展望と信念を背景に開学に至った大学だ。APUは開学以来、「アジア太平洋」を冠する大学として、常にアジアのダイナミズムを日本の教育に取り込むことを目指してきた。現在、アジア太平洋学部と国際経営学部の2学部、大学院としてアジア太平洋研究科と経営管理研究科の2研究科で構成される。創立20年に満たない若い大学だが、アジア太平洋地域における国際大学として存在感を着実に増しつつあり、九州はもとより日本全国から学生を集めることに成功している。日本社会では2010年代に至って「グローバル人材」なる表現が人口に膾炙するようになった。今や、グローバル教育の推進を標榜する大学も珍しくない。しかし、大学全体で「国際化」「グローバル化」できているか、あるいは世界水準が目指せているかと言えばいささか心許ない。国際戦略や国際交流を担当する組織だけがいわゆる「出島」として活性化し、それ以外との温度差が見られるなどもよく耳にする話だ。翻って、APUは、設立当初からアジア太平洋における本格的な国際大学として自らを位置づけ、その実現に向けて取り組んできた大学だ。開学宣言には、基本理念として「自由・平和・ヒューマニティ」、「国際相互理解」、そして「アジリクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017国際認証AACSBを梃に推進する世界標準の大学づくり吉松秀孝 副学長大竹敏次国際経営学部長立命館アジア太平洋大学C A S E3

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