カレッジマネジメント204号
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38リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017ている校友も少なくない。その意味で校友は財産だ。校友を招いての特別講義の開催、校友のもとでのインターンシップなどにもつなげていきたいという。国際認証取得で広がる世界のビジネス教育ネットワークAPUは、国際認証取得を梃に、世界の大学との交流やネットワークをさらに広げていく。「国際認証は、大分・別府のキャンパスを飛び超えて世界の大学との協同教育や研究を進める契機だ。また学生や教員のモビリティも高まることで、キャンパスのグローバル化をもっと加速させられる。学生は、グローバルな舞台で切磋琢磨し、世界で通用するスキルや知識を身につけ、卒業後は世界中を舞台に活躍する。卒業生は、いずれ世界を変える人になっていく。それが本学らしい教育の姿であり、本学の基本理念の具現化につながっていく」。吉松副学長はそう語る。国際経営学部と経営管理研究科は昨年8月、マネジメント教育に関する国際認証AACSBを取得した。AACSBは経営学部(BA)や経営学修士(MBA)プログラム等について国際認証を行う米国評価機関で、2017年3月現在、世界53カ国786校が認証を受けている。日本でこの認証を受けたのはAPUが3番めだが、英語のみで学位取得が可能な学部・大学院両方の取得は日本初だという。世界トップクラスのビジネス教育を提供する機関としてお墨付きを得たと言える。それにしても、そもそもなぜ国際認証取得を目指したのか。国際経営学部(以下、APM)の大竹学部長は次のように説明する。第1に、APUには外国籍教員が多く、ビジネス教育を行う学部・大学院であれば国際認証を取得するのが当然という認識が共有されていたことがあった点だ。第2に、学生募集の点からみても国際認証は決定的な意味を持つ。国際学生は留学先を選ぶ際、世界の大学を比較検討するが、その際AACSB取得の有無も検討材料になっているという。第三に、AACSBがミッション・ドリブン(Mission-driven)、つまり大学・学部の使命を常に中核に位置づける形で体系化されていて、使命達成のために大学・教員・学生が何をすべきかが明示されていることだ。国際認証は教育改革の推進力としても使えるというわけだ。準備も入れれば8年も要した国際認証取得だが、大竹学部長は、それはAPMにとって一里塚に過ぎないと考えているようだ。ビジネス教育の国際認証機関には、AACSB(米)、EQUIS(欧)、AMBA(英)がよく知られ、3つ全ての機関から認証を取得した機関は「トリプル・クラウン」と呼ばれる。現在世界に100校、アジアには30校ほどだという。世界に1万6000以上存在するビジネス教育機関の中で差異化を図り、APUが頭一つ抜き出るためにもトリプル・クラウン取得を目指していきたいと大竹学部長は語る。「日本でも首都圏の有名大学がAACSB取得を目指すなか、地方大学である本学はうかうかしていられない」と危機感を示す。AACSBに限ってみても、日本が遅れているのであって、例えば中国・韓国・台湾では既に多くの大学が取得していて決して珍しくない。周囲を見渡せば既に競争相手は多く、現状に満足しているだけではダメだという。もちろん、国際認証取得はAPUに着実な変化をもたらしてもいる。取得後、海外大学との関係や提携がドラスティックに変わったと、吉松副学長と大竹学部長は口を揃える。海外の大学からAPUとの協定や連携を求める声が増えたそうだ。世界のビジネス教育ネットワークとつながり、カリキュラムを合わせることもしやすくなった。やはりAPUにとって、国際認証取得の効果は大きかったと言える。国際基準に基づく「学びの質保証(AOL)」AACSBでは21の認証基準が設定されており、プログラムごとに相応の基準をクリアすることが求められる。とりわけ重要なのは、先述の「ミッション・ドリブン」の考え方に基づき、ミッションを達成できるよう学習の「ゴール(目標)」と「オブジェクティブ(目的)」を体系化することだ。APUでは、全学のミッション(開学理念)→学部(APM)のミッション→それを実現するための4つのゴール→各ゴールを構成する複数のオブジェクティブというように、階層的に体系づけられている(図表2)。これらを達成するための手段がカリキュラムであり、そこに授業科目がマッピングされることになる。逆に言えば、カリキュラムや授業の実践とその成果検証を通して、着実にオブジェクティブやゴールを達成し、ミッションの実現を図ることが求められ

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