カレッジマネジメント204号
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39リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)る。ミッション・ドリブンの考え方では、教員も好奇心駆動型の研究だけでなく、ミッションに応じた研究活動が求められる。それが、AACSBの求める体系的な学びの質保証(Assurance of Learning: AOL)につながるというわけだ。ただ、こうしたシステマティックなやり方を導入するのは苦労も多かったと大竹学部長は振り返る。1つには、やはりミッションを定めて、それをカリキュラムや授業につなげるのが難しかったという。もう1つは教員資格だ。例えば、日本では高い社会的地位を誇る公認会計士であっても、学士号のみであればAACSBが定める教員基準はクリアできなかった。博士号がなければ十分な教員資格としては認められなかったという。しかも、今回の認証取得は維持・発展のスタートにすぎず、今後の認証継続には5年ごとの審査(Continuous Improvement Review)が求められる。さらに、AACSBは社会変化に応じて常に認証基準を見直しており、次回2021年の審査では新基準に対応することが必要になる。具体的には、ビジネス教育に必須の「イノベーション」「エンゲージメント」「インパクト」といった新たな観点に基づく定量的な分析・検証が求められることになったという。なるほど、世界水準を維持することはなかなかに骨の折れる作業だと言えるだろう。それでも、吉松副学長、大竹学部長共に、国際認証取得は大学改革の好循環につながると前向きに捉えている。AACSB認証を機に、海外大学との学生・教員の交換を増やし、将来的にはデュアル・ディグリーにつなげていきたいと大竹学部長は期待をかける。さらに、近くインドネシアの大学と提携を結び、カリキュラムにインターンシップを組み込む予定だという。吉松副学長も、AACSBの評価を通して学んだ「学びの質保証」システムの手法をもう1つのアジア太平洋学部にも広げ、全学的な内部質保証システム確立につなげていきたいと語る。国際認証は今後、世界水準とAPUらしさという「質」の両面を育む基盤となっていくのではないか。APUの挑戦から日本の大学が学べることは少なくない。特集認証評価第3サイクルに向けて図表2 APMのミッション、ラーニングゴール、ラーニングオブジェクティブ「自由・平和・ヒューマニティ」、「国際相互理解」、「アジア太平洋の未来創造」を基本理念として、国際経営学部は、マネジメントに関する基礎的な知識を伝授し、異文化コミュニケーション能力を強化し、文化の多様性を維持することを通じて、グローバル化する企業やその他組織における経営上の諸問題の解決のために活躍する、職業倫理を備えた人材を育成することを目的とする。APMのミッションAPUのミッション(開学宣言)ラーニングゴール 2基礎的な専門知識を取得するラーニングゴール 3異文化コミュニケーション能力について学ぶラーニングゴール 4グローバルな視点を身につけるラーニングゴール 1ビジネス倫理を理解するラーニングオブジェクティブ2a基礎的なビジネス概念の理解力を示すラーニングオブジェクティブ3aコミュニケーションの仕方に文化 が影響していることを理解し、それ を表現するラーニングオブジェクティブ4aグローバル化のインパクトを理解するラーニングオブジェクティブ1aビジネス・エシックスの基礎的な理論や原理を理解するラーニングオブジェクティブ2b一定水準の文章力やプレゼンテーション力を示すラーニングオブジェクティブ3b多文化環境において効率的にコミ ュニケーションをとるラーニングオブジェクティブ4bビジネス環境が国によって異なる ことを、例示して説明するラーニングオブジェクティブ1bビジネス・エシックスの意義や重要性を示すラーニングオブジェクティブ2c適切な分析ツール(定性的・定量的)を用いて、ビジネスの問題を検討するラーニングオブジェクティブ3c少なくとも1つの第2言語に精通しているラーニングオブジェクティブ4cビジネス・マネージメント分野におけるグローバルな出来事を認識するラーニングオブジェクティブ1c倫理的問題を分析し、解決策を提示するラーニングオブジェクティブ2d 問題解決能力を示す

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