カレッジマネジメント204号
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40認証評価の第3サイクルでは、内部質保証が重点評価項目とされ、各大学は自律的な質保証体制の構築と実質化が求められている。他方、大学経営の観点からは、2018年以降の18歳人口のさらなる減少等により競争環境が激化することを見据え、経営と教学をどのように関連づけ、実効性のあるマネジメント体制のなかで、教育研究を活性化し、学生の学習成果を高めていく取り組みを実現できるかが重要になっている。関西学院はマネジメントを総合的・統括的に実現するために2016年に総合企画部を新設するとともに、マネジメントを担う各分野の目的・目標の進捗や達成度を示し、PDCAの可視化を図るKPIダッシュボードの開発に取り組むことで、大学マネジメント全体を俯瞰し、モニタリングする体制の構築を進めようとしている。11学部14研究科を擁する大学・大学院のみでなく、幼稚園から短期大学まで9つの学校を運営する関西学院の取り組みは、総合大学において内部質保証の実質化を進めている具体例となるだろう。総合的マネジメント体制のための2つの改革と「Kwansei Grand Challenge 2039」認証評価が第2サイクルへ入る頃、関西学院大学では、学内で自己点検・評価の仕組みを確立しつつも、その目標体系と大学独自の中期計画が併存する中で、それぞれのPDCAを統合することを課題としていた(本誌172号、2012年1月)。このことについて、村田 治学長は、「関西学院大学の仕組みは、5年前と比べて格段に進化した。第2期の認証評価はPDCAがあるかどうかを問うものであったが、第3期では内部質保証の実効性が問われる。効果的に内部質保証をまわすためにはそのための仕組みが重要となる。関西学院は2012年から2つの点で大きく変わった。1つは、法人の役職と大学の役職の『たすきがけ』であり、もう1つは、『総合企画部』を2016年に立ち上げたことである。現在、総合企画部を中心に、創立150周年の2039年に向けた超長期ビジョンを含めた、経営戦略を作成中である」と話す。法人の役職と大学の役職の「たすきがけ」とは、2013年以降に関西学院が取り入れた、経営(法人)と教学(大学)の新たな関係である。大学の学長が法人の副理事長となり、学長が任命した副学長が法人の常任理事、理事長の任命した常任理事が副学長となることで、経営と教学を一体的に運営する仕組みである。村田学長は、「2015年に学校教育法が改正され、学長と教授会の権限が整理された。しかし、ガバナンスやマネジメントで最も重要なことは経営と教学の関係である。経営と教学のPDCAサイクルは連動することが前提となる。これによって、ヒト・モノ・カネ・情報の資源を一体的に運営することができる」とこの仕組みの意味を説明する。この仕組みの背景には、以前は、大学のPDCAサイクルは教学のみであり、法人による経営と分離していたことがある。「たすきがけ」によって、学長が副理事長として法人全体の経営にも関わりながら、大学運営を進めることができるようになった。関西学院には、9つの学校があり、常に大学の意向が優先されてきたわけではない。そのため、大学と法人で意見が分かれるような場合、大学側は法人にお願いすることでしか経営的事項を進めることができなかった。しかし、関西リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017質保証と経営戦略の総合マネジメントで改革を推進村田 治 学長関西学院大学C A S E4
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