カレッジマネジメント204号
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49リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017教員の進路指導力や意欲や価値観、そして保護者の干渉の高まりの影響が気になる。他方、減少幅が大きいのは【進路環境】「入試の易下」「産業・労働・雇用環境の変化」「高卒就職市場の変化」となっている。これらの要因は、進路指導の現場では複雑に交雑していることが推察されるが、最も大きく影響を与えている要因として上位3項目に絞って回答を求めると、「教員が進路指導を行うための時間の不足」「進路選択・決定能力の不足」「入試の多様化」となってくる。高校の取材を通じて感じていることは、高大接続改革における新テストの動向に不安を抱きながらも、現実問題として、目の前の生徒の進路指導にエネルギーを費やす教員の姿だ。一ること」54%、以下【卒業後】「就職に有利であること」45%、「卒業後に社会で活躍できること」44%が上位を占める(図表3)。全体傾向としては大きく変わらなかったものの、前回調査との変化では、「学びたい学部・学科・コースがあること」「教育内容のレベルが高いこと」「教授・講師陣が魅力的であること」「学習設備や環境が整っていること」「学費が高くないこと」「伝統や実績があること」など、本質的な学びの項目を中心にスコアの増加が見られる。学部・学科名称だけでは学ぶ内容が純粋に想起できなくなってきている昨今、高校での学びとのつながりとともに、卒業後の社会とのつながりをいかに分かりやすく訴求していくかがポイントになってくるだろう。般入試とは時期の異なる推薦・AO入試への対応、出願内容・方式の複雑化、膨大な情報下における生徒の志望校選択・進路決定に向けた支援、そして保護者の過干渉等、学校としての進学・進路実績と、個々の生徒の将来を見通した進路選択の指導の狭間で戸惑う声が多数聞こえてくる。教育内容や教授・講師陣の魅力、学習環境などを重視する傾向に大学進学の指導の重視項目は?大学への進路指導で学校選びの際にどのような点を重視しているのだろうか。トップは【教育内容・制度】「学びたい学部・学科・コースがあること」79%、2位【構成要員】「学生の面倒見が良いこと」56%、3位【教育内容・制度】「生徒の興味や可能性が広げられ「入試の多様化」 ●学習指導要領、入試制度が変わっていくことにより、新たな制度、取り組みを追加していく必要があり、個々の生徒への学習・進路指導などを十分に実施するための時間減少につながる。●4月になればAOの指導がはじまり、翌年3月まで国立後期の指導が続く。1年中受験で「教育」ができない。●高大接続改革の号令とともに、ここ数年の学部改組や入試変更はとても教師が把握できるものではない。「教員が進路指導を行うための時間の不足」●教科指導、HR指導、部活指導に多くの時間をとられる。●生徒の進路希望や受験方法の多様さに対応しきれていない。「進路選択・決定能力の不足」●「行きたい学校」ではなく、「行ける学校」を志望する安全志向が強くなっている。●高卒後の幅広い進路選択において、自分の意志で決めきれなく、保護者や教員に頼る傾向が強い。フリーコメント2014年 全体2016年 全体(%)020406080図表2 進路指導の困難の要因の変化(進路指導を「難しい」と感じている/複数回答)※カテゴリーごと「2016年全体」の降順生徒の問題保護者の問題学校の問題進路環境の問題調査数進路選択・決定能力の不足学習意欲の低下職業観・勤労観の未発達学力低下規範意識・道徳意識の低下家庭・家族環境の悪化:家計面について進路環境変化への認識不足保護者が干渉しすぎること子どもに対する無関心・放任子どもに対する過剰な期待家庭・家族環境の悪化:家計以外の面について学校や教師への非協力教員が進路指導を行うための時間の不足校内連携の不十分教員の意欲・能力不足旧態依然とした教員の価値観教員の実社会に関する知識・経験不足生徒とのコミュニケーション不足入試の多様化産業・労働・雇用環境の変化仕事や働くことに対する価値観の変化上級学校の学費高騰入試の易化高卒就職市場の変化2016年 全体101666.654.348.948.414.250.546.635.130.829.915.37.767.334.828.227.723.917.762.629.928.324.922.510.92014年 全体102667.355.151.851.316.248.548.932.229.827.713.97.268.332.724.924.725.216.859.635.031.217.229.815.8

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