カレッジマネジメント204号
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53る。そこには、教育機関─国─地域内─地域間の多層的なプログラム構造が見られる。各教育機関が行う交換留学や短期プログラム等の教育機関の枠組みに加え、国単位で作られたネットワークには日本、中国、韓国による「キャンパス・アジア」がある。また地域機構が組織する地域内プログラムには、アセアンが主導する「アセアン大学連合(AUN)」、東南アジア教育大臣機構・高等教育開発センター(SEAMEO-RIHED)による「東南アジア国際学生モビリティプログラム(AIMS)」、南アジア諸国連合(SAARC)による「南アジア大学(SAU)」がある。さらにこうした地域機構が、アジア以外の地域と結んで形成されているものとして、アジア太平洋地域を結ぶ「アジア太平洋大学交流機構(UMAP)」、相互尊重と平等の精神に基づき、アジア・欧州両地域の協力関係を強化することを目的とした「アジア欧州会合(ASEM)」を母体とするアジア欧州財団(ASEF)による人的交流、さらに、アセアンの高等教育をEUが支援することを目的として、アセアン経済共同体(AEC)とEUの間で連携が始まった「EUシェア」もある。一方、プログラムとは別に、教育の質保証を担保する枠組みとして各国が設置している質保証機関のほか、地域機構が設けている質保証の枠組みとして、アジア太平洋質保証機構(APQN)、アセアン質保証機構(AQAN)があり、さらに地域間を結ぶより大きな傘として国際質保証機関ネットワーク(INQAAHE)がある。このようにアジア高等教育圏ではプログラムが多層的に展開されており、さらにそれは様々な変容を見せつつある。例えばAIMSはアセアン域内でのメンバー拡大を図るとともに、日中韓三か国との連携を目指している。AIMSは発足当初、マレーシア・インドネシア・タイの三カ国による国家間協力により、各国の頭文字を取ってMITプログラムとして組織されたが、SEAMEO-RIHEDが所管するようになってからは、フィリピン・ブルネイ・ベトナムに加え、日本及び韓国へとパートナーを拡大し、近未来的にはASEAN+3のスキームを企図していると言われる。他方、ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマーから成るCLMV諸国は、サブ・リージョナルな連携を組織している。以上のように、アジア高等教育圏は、入れ子状になった多層的な組織から成っている。協働を促す枠組み作りへの挑戦「アジア高等教育圏」の誕生は、アジア各国にも少なからず影響を与えている。第1に、従来の国別の政策枠組みに加え、教育圏を意識した政策展開がなされるようになっていることである。各国の高等教育政策には基本的に国家統合と経済発展のための人材育成という目的が根底にあり、国際化が進むなかで、アジアのみならず世界からいかに優秀な人材を獲得するかという競争原理が働いている。「高等教育の国際化」のもとにトランスナショナル教育の積極的な導入を図り、高等教育のランキングを掲げるのも、学生移動の動向をにらみながら魅力的な高等教育をアピールするためである。こうした競争に対して、アジア高等教育圏では次世代の人材育成を協働で行うことが重視される。いずれの教育枠組みにおいても、地域に共通の問題を共に考え、解決を目指す地域人材をいかに育てるかが目的に掲げられている。そこには、各国の「高等教育の国際化」を図るのとは別に、協働で教育に当たり、研究活動を活発化させようとする「国際高等教育」の動きが認められる。第2に高等教育圏という、協働して運営されるトランスナショナルプログラムの登場に伴い、学生のモビリティを高め、プログラムや教育機関相互の互換性を高めるための様々なスキームや、質保証のシステムが登場するようになった。質保証のスキームとしてはOECD-UNESCOが定めた「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン」があり、ヨーロッパではEUが展開リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017出典:堀田泰司「学生交流政策と単位互換制度―欧州の『共に学ぶ』学生交流事業とアジアの挑戦―」松塚ゆかり編著『国際流動化時代の高等教育―人と知のモビリティ―を担う大学』ミネルヴァ書房、2016年、187頁。*1AACs はAsian Academic Credits (AACs)を示す。*2アメリカは約3分の2の高等教育機関が1単位=約45時間の概念を採用している。*3ヨーロッパとラテンアメリカの間では1 ECTS=1CLAR=24〜33時間という換算が行われている。*4CLARは中南米諸国の単位互換制度Latin American Reference Creditを示す。*5CATSは英国におけるCredit Accumulation and Transfer Schemeを示す。表 高等教育圏の学生流動を促す単位互換制度の検討単位互換の地域別枠組みアジア( AACs )*1アメリカ*2 ヨーロッパ(ECTS)*3英国(CATS)*4ラテンアメリカ(CLAR)*51AACsの換算1単位約1単位約1.5-1.6ECTS約3-3.2単位約1.5-1.6CLAR学修時間38-48時間約45時間37.5-45時間&40-48時間約30時間36-49.5時間授業時間数13-16時間約15時間――――――――――――

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