カレッジマネジメント204号
60/72

60リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017科目に適用している。学修成果をレーダーチャートで可視化することによって、学生は自分のどこが足りないかを把握しやすくなる。また教員も、ある能力が目標通りに身に付いていない学生が多かったら、講義のやり方を少し変えるべきかもしれない、と振り返ることができる。学生と教員の両方に役に立つことが重要だという。また、ディプロマポリシー(卒業時に修得しているべき能力の設定)とYU CoB CuSとを関連付ける試みも始まっている。「国際総合科学部では従来の取得単位に加えて、YU CoB CuSの評価でディプロマポリシーの基準スコアをクリアすることを卒業要件に入れています」。YU CoB CuSの導入は全学部で行うが、卒業要件にまで適用するのは今のところ国際総合科学部1学部のみだ。「新しい学部から導入を進めています。新しい学部を作るのはエネルギーも要りますし、そこの先生方も大変だと思いますけども、『グローバルな人材を育成する』『地域に対する貢献を明確にする』という2つの方向性へのエンジンになると考えています。大学が全体として目指すべき方向に非常に近い新学部ができたので、これを契機として全学を改革していきたいという気持ちが強いですね」。課題は変化への対応力をいかに高めるか改革にあたっての困難な点として岡学長は、変化それ自体への抵抗感を指摘する。例を挙げれば、地元就職を積極的に増やそうとする方針への抵抗だ。「地元就職を増やすなんて、大学の勝手じゃないかとの声もあります。そうではなくて、山口県がどんな県かを知ってもらって、地元のいい企業を紹介して、あとは学生が選べばいいということなのです」。岡学長がそう言う背景には、学生が山口県の企業をほとんど知らないという現実がある。瀬戸内海の工業地帯につながる山口県には、中小企業のカテゴリーではあるが売上が年間100億円以上という企業が約80社ある。ところが、3分の1の学生が山口県内の企業を1つも知らないし、91%が5社以下しか知らないのだという。YFL育成プログラムの「山口学」が必要な所以だ。また、「国立大学の気分が抜けない」ことも障壁になるという。「自分の好きな研究だけ自由にやっていればいい」というような意識が残っているというのだ。それに対して岡学長は、もっと「学生に寄り添う大学になるべきではないか」と言う。「『学生ファースト』とまで言うのはややためらわれますが、学生が我々にとって一番大切なものです。いい人材を世の中に出していくというミッションがなかったら、大学でなく研究所でいい。教育と研究がマッチングすることで新しいものがさらに出てくるのが大学であって、若者を育成しながら自分も成長していける。その喜びを感じることができるというのが、研究所にはない、大学ならではのことだと思います。ですから学生の面倒を見ないのはいけません。就職目的だけではなく、日頃から学生のためを考えるのが我々の仕事だと思います」。学生が動けば大学が動く今後の方向性としては、近年の組織改革をきちんと評価することが重要だという。2015年度には教育学部を学校教育教員養成に特化、経済学部は5学科を3学科にして、それらの定員の一部を国際総合科学部の開設にあてた。2016年度には大学院を再編し、人文学部・人文科学研究科を改組した。「その一つひとつに、『あとは頑張れよ』というのではなく、そういう組織変え、教育改革をやったことの評価をしなければいけない」。いくつかの「困難」も指摘しつつ、岡学長は「取組を理解して協力する人が増え、大学は確実に変わっています」とも言う。何かインセンティブがあって協力者が増えているわけではなく、社会の変化を教員自身が感じ取っているからだろうということだ。「あと何年かしたら日本人の職業の半分は消えるといわれています。その中でどう人材を教育していくか考えるのは、我々大学人しかいないと思います。学生も元気になってきていると思います。先生方もそういう学生に引きずられているところがあると思いますね。だから、学生が動くと大学が動くんです。先生が動くより学生が動くほうが、大学は動くのではないかと感じます」。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る