カレッジマネジメント204号
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68リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017世界全体を見渡したシニアマネジメントの最適配置3Mの強みとして挙げられる三つめの要素であるグローバル・ケーパビリティーズは71カ国に展開する現地法人網を意味するものである。多くの国においてアメリカの製造業としてはいち早く参入し、長い歴史を積み重ねることにより、地域に根ざし、強い顧客基盤を獲得している。世界196カ国のほぼ全てにおいて製品・サービスの販売を行っているが、顧客の近くで開発し、製造し、販売するという考え方に基づき、現地法人を置く71カ国のうち、できるだけ多くの国で製・販・技の全機能を持たせるべく拠点整備を行ってきた。その一方で、それを追求しすぎると、それぞれの国がサイロになって小さくまとまり、グループの力を活かせないという弊害も生じる。人事面でいえば、どれだけ優秀な社員であっても一つの現地法人の中に閉ざされてしまうとキャリアパスも頭打ちになる。この問題を解消すべく、優秀な人材が現地法人を超えて活躍できるように、インターナショナル・アサインメントを全世界で一括管理することにより、地域や国を超えた社内人材の流動性を高めるようにしている。具体的には、地域本社のディレクターや現地法人のトップなど、3Mグローバルのシニアマネジメントポジションを規定し、その時点において世界全体を見渡して最適な人材を配置するという方針で運用を行っている。例えば、現在のアジアのビジネス担当はベルギーから、ファイナンス担当はコロンビアから、人事担当は日本から、R&D担当とサプライチェーン担当はアメリカからなど、出身は多様である。現地法人トップについても日本のトップはアメリカ、韓国のトップはインド、オーストラリア・ニュージーランドのトップは日本と、出身国を超えた人材配置が行われている。グローバルレベルでの分権と集中のバランスグローバル企業にとって、地域本社や現地法人にどこまで任せ、本社で何をどうコントロールするかは難しい問題である。3Mは、6つの地域本社・71の現地法人という「地域軸」に対して、5つの事業部門・25の事業部という「事業軸」と、人事、財務、マーケティング、サプライチェーンなどの「機能軸」を、横串的に通す「マトリックス経営」を基本にする。具体的には、現法のビジネスリーダー(事業別責任者)は、現法トップと地域本社のビジネスリーダーの両方に報告責任を負うことになる。同様に現法のファンクションリーダー(機能別責任者)は、現法トップと地域本社のファンクションリーダーの両方に報告責任を負う。地域本社と本社の関係も同様である。可能な限り現地法人に権限委譲することを基本としながらも、現法単位だけで運営すると事業別のノウハウや機能別の能力が育ちにくい面もあることから、事業軸と機能軸を通すことでこれを補い、分権と集中のバランスを確保している。さらに近年は、全社統一のERP導入により業務プロセスをグローバルレベルで統合するとともに、バックオフィス機能(会計、購買、人事等)とサプライチェーンのコントロールタワー機能(リソース・材料・製造計画等)をそれぞれ世界3カ所に集約している。3Mの「人事の基本原則」と「リーダーシップの行動指針」『3Mジャパングループ会社案内 』 2017 の掲載内容に基づき作成個人の尊厳・価値を尊重する社員一人ひとりの自発的行動を奨励する各人を自己の可能性に挑戦させる機会を平等に与える人事の基本原則Play to win (勝ちにこだわる)Innovate (イノベーションを推進する)Foster collaboration and teamwork (協働とチームワークを育む)Prioritize and execute (優先事項に集中し実行する)Develop others and self (チームと自分を成長させる) Act with integrity and transparency (誠実さと透明性をもって行動する)Leadership Behaviors (リーダーシップの行動指針)

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