カレッジマネジメント205号
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20リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017半分以下に減少した。 2012年には、文部科学大臣が新設大学3校をその当時不認可としたことでさらにマインドが冷え込む。2013年に「大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会(報告)」が公表され、2013年度から、学生確保の見通しや社会的ニーズの審査が行われることとなり、大学新設の際は、トップが全体構想を説明する事前面接も義務化された。 2016年度開設分からは、審査スケジュールも早期化した。大学新設の場合は前々年度の3月末から10月末へ、学部設置の場合は前年度5月末から前々年度3月末へと申請時期が前倒しになり、認可時期も共に2カ月前倒しの前年度8月末に変更された。保健衛生と学際領域の届出制度も見直され、2016年度の件数は一時減少した。 次に志願倍率だが、大きく上昇した年は大規模大学の新増設に伴うもので、下降する年も個別の理由によるものだろうが、それを除けば、平均6倍超と高い倍率で推移しているといえる。新しい学部・学科が受験生には魅力的に映っているようだが、実際にどのような分野の新増設に人気が集まっているのだろうか。次項で見ていくこととする。単独分野の新増設トレンド(2008ー2016)(図表6) 単独分野の新増設では、設置数トップ3が医療系で占められ、1位の看護学は設置数93件と群を抜いている。毎年連続して設置されているが、単年度の設置数のピークは2014年と2015年で、共に16件ずつ設置されている。平均倍率も2008-2012年の4.5倍から、2013-2016年は6.1倍に上昇した。2位の医療技術学も設置数合計64件と多く、設置数のピークは2010年の13件。志願倍率は後半の期間のほうが6.8倍と高い。ただ、全体のトレンドを見ると2013年以降下降しつつあり、今後の動向に注目したい。3位のリハビリテーション学も前・後半で設置が続き、後半の志願倍率は5.2倍と5倍を超えた。 このほか、4位の経営学は社会科学系の中でも新しい分野として新設が活発だ。5位の心理学も人気が高いので設置数も多い。6位の保育・児童学、8位の栄養・食物学等の資格系が上位にあるが、設置は前半のほうが活発なようだ。7位の教育学は2016年の設置数7が最多で、今後も設置が続く可能性はあるが、志願倍率は前半の9.5倍に比べやや下がり7.2倍となっている。 後半で志願倍率が10倍超の分野に注目すると、10位の語学(14.4倍)、11位の教養学(12.3倍)、デザイン(13.6倍)、17位の生命科学(42.5倍)、機械工学(18.3倍)、建築学(20.0倍)、21位の情報工学(19.3倍)、応用化学(30.0倍)。これらはまさに成長が見込まれる分野で、今後、設置数が伸びることが予想される。これには及ばないものの、14位の経済学、21位の観光学は、後半で志願倍率を上げ、それぞれ7倍超、8倍超となっている。 反対に、後半で志願倍率が5倍に満たないものは、経営学、保育・児童学、福祉学、社会学、美術、人間科学だった。複合分野の新増設のトレンド(2008-2016)(図表7) 複合分野の新増設は、1位「教育学+保育・福祉学」(27件)、2位「スポーツ学+健康科学」(20件)、3位「栄養・食物学+健康科学」(14件)と、2008-2012年のトレンドを彷彿させる顔ぶれだ。設置年も概ね前半に集中しているといって良いだろう。志願倍率は3位を除き、後半は低下している。 4位以降は、経済学、経営学、観光学、情報学、メディア学、電気工学、電子工学、社会学、国際関係学…と、2013年以降トレンドの分野が多くランクインしている。 8位の「数学+物理学」や「生命科学+医学(専門課程)」も、比較的前半に設置されていて、志願倍率も高かった。 後半で志願倍率が10倍超の分野は、6位「電気工学+電子工学」(20.2倍)、15位「機械工学+システム・制御工学」(25.1倍)「システム・制御工学+機械工学」(14.7倍)。設置数が少ない中での数値なので、個別の要因もあろうが、第4次産業革命関連の新増設には白地がありそうだ(詳細は第3章で触れたい)。 また、15位の「社会学+人間科学」「人間科学+教育学」「保育・児童学+福祉学」「美術+デザイン」など、単独で募集に苦しむ人間科学や福祉学などを人気の分野と組み合わせた例も見られるが、志願倍率は2倍に満たず、依然苦しい状況のようだ。

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