カレッジマネジメント205号
26/68

26リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017本章では、将来の社会動向を見据えた新たな動きに注目し、現在起こりつつある兆しをまとめたい。予測できない未来への人材育成近年、AI(人工知能)やIoT、ロボットやビッグデータ等に象徴される第4次産業革命等がメディアを賑わしている。データを軸にしたプラットフォームの構築や技術革新に注目が集まるなか、「アメリカの小学校に入学した子ども達の65%は、今は存在していない職業に就くだろう」(ニューヨーク市立大学大学院センターキャシー・デイビッドソン教授)、「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」(オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン准教授)等、センセーショナルな将来予測が文部科学省の資料でもたびたび目にするようになって久しい。将来起こると言われている非連続な社会変化は、職業・仕事・労働といった社会を構成する重要な要素を中心とするものであり、働く1人ひとりに大きく影響するという意味でも、極めてシンボリックである。中央教育審議会ではこの4月から、いよいよ2040年を見据えた高等教育グランドデザインの議論が始まっている。一方で現実的な問題として、日本では18歳人口が再減少フェーズに入る2018年を来年に控え、向こう5年スパンでも、大学入学定員の厳格化や大学入学共通テスト(仮)の導入等、大学運営にインパクトの大きい政策が続く。市場縮小に伴い財政健全化がうたわれ、大学も既に従来のような「昨年踏襲」型の運営では立ち行かなくなりつつある。大学も運営から経営へ、自ら課題を抽出しその解決に向け自律的にPDCAを回す手腕が求められていると言えるだろう。こうした世情のなか、生き残りをかけて先の見えない時代を見通す中長期計画の策定を急ぐ大学は、自校の将来ビジョンに基づき時代に即した新増設改革を模索している。社会や産業界ニーズの変化は、当然のことだが、新増設改組の領域にも少なからず影響を与える。大学における人材育成と研究のバランスは様々だが、教育に主軸を置く場合、時代の潮流に合った人材育成は必須と言えるだろう。求められる能力と大学の特長をつなぎ、新たな領域開拓を行おうとするチャレンジングな改革が目につくようになった。ここでは特にここ2~3年の新増設で見られる特徴的な傾向や新たな領域について、切り取って考察してみたい。技術革新領域の人材育成は急務まず注目されるのは、先述した「第4次産業革命」、即ち情報科学技術系の進歩に対応する人材育成の動きである。P.20でも触れたように、機械工学・情報工学等の新増設の倍率は、近年概ね10倍を超えている。以前は情報系と言えば情報処理技術者等を中心と図表9 今後起こり得る社会変化(小誌190号より一部再掲)今後のマーケット動向と兆し3章労働力の減少社会福祉コスト増大少子高齢化先端科学グローバル化世界先端科学技術力の推進海外人材の活用高齢者の再雇用女性の活用健康維持増進予防医療100年人生国際人材育成食の安全語学習得食資源確保国際標準化産業・人・サービス流動化

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る