カレッジマネジメント205号
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28リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017ツマネジメント(経営)、教育等、スポーツをテーマにし得る他領域と結びつき、複合化してマーケットを拡大している。2017年にはスポーツを冠する新増設学部学科が9大学で開設したが、そのうちアスリート育成に特化したスポーツ学部は無く、スポーツ健康が5件で最多、ほかはスポーツ科学、スポーツ国際、スポーツ医科、スポーツコミュニケーションとなっている。このうち、京都産業大学現代社会学部健康スポーツ社会学科では、社会の安定的発展には構成員が健康であることが大前提とし、社会学と健康スポーツ科学を融合した、新たな視点での健康・スポーツの可能性・価値構築と人材育成をうたっている。今後の超高齢社会の日本では、長生きできて健康であり、質の高い生活を送れることが社会の大きなテーマとなる。その際の健康増進に重要なものの1つがスポーツなのである。また。こうしたスポーツの効用は地域活性や国際親善にもつながるものであり、スポーツが持つ社会的・文化的役割を社会学方面から学ぶ意義が高まっているというわけだ。2018年度開設の学部認可申請でスポーツ系は3件あるが、いずれもスポーツと他分野の複合である。文理融合領域は国公立大学中心最後に、先述した「予測不可能な社会」に対応する領域の開発、特に国立・公立大学や上位校で多い、文理融合系の学部学科開発の動きである。ここで言う文理融合型とは、多様な学問領域を包含し、カリキュラム上従来の理系文系の枠組みに明確に分割できないもの、あるいは混在しているものを指している。従来も「総合」「創造」等の名称を付した学部は新たな人材育成を掲げ学際的な色合いが濃い傾向があったが、それがさらに加速しているように見える。参考までに、「総合」「創」の名称が含まれる国公立大学の分布を、図表10に示した。2016年には愛媛大学社会共創学部、徳島大学総合科学部、長崎県立大学地域創造学部等が設置された。2017年には新潟大学創生学部が設置されたが、いずれの学部も文系・理系問わず受験できる入試科目が設定されており、従来の文理の垣根に囚われない人材育成を目指している。2018年には九州大学で共創学部が設置される予定だが、これは以前より展開していた学部横断型「21世紀プログラム」の発展的改組である。グローバル化社会における多様な人々との協働から、異なる観点や知見の融合を図り、共に構想し、連携して新たなものを創造する「共創」を冠し、新たなイノベーション創出を担う人材育成に取り組む。前提となる英語力はもちろん、複合的な課題解決を図るため、人文科学・社会科学・自然科学という既存の学問分野を横断する領域展開、「構想」「協働」「経験」というサイクルを作るためのチーム基盤型学習法(Team-Based Learning,TBL)等、自らの知識を活かし、他者と合意形成するためのあらゆるアプローチと志向性を涵養するという。国立大学で新増設が加速した背景として、大きく2点の変化がある。まず1つ目は、2015年6月に文科省大臣名で各大学に送付された通知において、特に人文系枠組みについて、組織改編を含めた取り組みが求められたことを契機にして、教育学部のうち教職免許取得を目的としないいわゆる「ゼロ免」課程の改編や、文系から理系への定員シフト、新領域の新増設が進んでいること。2つ目として、国立大学に3つの枠組み、即ちテーマに沿った行動を評価して運営費交付金の増減を反映させる仕組みを導入したことだ。この枠組みはそれぞれ、「地域と特色分野の教育研究(地域)」で55大学、「特色分野の教育研究(特色)」で15大学、「卓越した海外大学と伍(ご)した教育研究と社会実装(世界)」で16大学となっているが、これにより各大学で掲げるテーマが明確となり、それに即した教育内容の見直しが行われている。こうした動きが新増設・改組ラッシュの呼び水となったと言えるだろう。2018年計画の概観図表8にある通り、2018年開設予定認可申請のうち、大学・短大新設認可申請は7件、学部学科設置認可は33件となっている(2017年3月末現在)。これらの答申は概ね8月末である。今後届出での設置も追加されるため、全体的な傾向をまとめることは難しいが、これまで挙げてきた要素以外で、現状の情報を概観してみたい。まず大学設置について、近年特有の動きとしては地方大学の公立化があろう。2018年度では石川県の小松短期大学が公立小松大学へ、長野県の長

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