カレッジマネジメント205号
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302017年4月、東洋大学は新たに3つの学部と5つの学科をスタートさせた。全部で13学部となり、入学定員は6027名から6626名へと、約600名も増加した。国際学部(グローバル・イノベーション学科、国際地域学科、定員390名)、国際観光学部(国際観光学科、定員366名)、文学部(国際文化コミュニケーション学科、定員100名)、情報連携学部(情報連携学科、定員400名)である。このうち、国際学部国際地域学科と国際観光学部国際観光学科は、従来の国際地域学部の改組によるものであるため、定員の純増は計約600名となる。それにしても少子化が加速化するなか、思い切った改革に出たものだ。というのも、新設の情報連携学部は、新たに赤羽台キャンパスを設置しての開設である。また、「国際」や「グローバル」を学部・学科名称に持つ大学は、既にいくつもあり、名称だけでは特段新しいとは言えないからである。今後、十分に学生を集めることができるのか、リスクを感じることはなかったのか。とはいえ、各学部のミッションや教育内容にまで分け入って見ると、それぞれに特色をもって設置されたことが分かる。国際学部は、当然のようにグローバル人材の育成を掲げているが、これは巷で言われるような日本企業の海外進出のための人材育成だけを意図しているわけではない。むしろ、グローバリゼーションによって見えてきた様々な課題―例えば、貧困の蔓延や地域紛争の激化は典型例だろう―に対して、その解決に貢献する人材や、国内外の開発支援等を通じて現場主義に基づく“地域づくり”を展開できる人材の育成をミッションに掲げている。こうした目的のもと、グローバルな問題への理解と英語力の強化を中心としたカリキュラムが編成されている。国際観光学部は、増加する訪日外国人観光客をターゲットにしていることはもちろんだが、産業としての観光を考えるだけではない。観光の社会的責任、持続可能な観光という視点に立ったとき、必要なのは観光政策である。その両面から観光事業をマネジメントできる人材育成を掲げている。そして、とりわけアジアにフォーカスを当てて、英語以外の外国語の修得にも力を入れている。情報連携学部は、コンピュータ・サイエンスの知識やスキルを獲得するのみならず、それをベースにしてICTを活用し、多様な人と「連携」し、多様な社会的課題を発見して解決する人材の育成という、これまでにないコンセプトで作られている。特に新キャンパスがある北区との連携により、このコンセプトの実現を図ろうとしているところが興味深い。文学部の国際文化コミュニケーション学科は、欧米社会を中心とした語学力の修得・向上と異文化理解に加えて、自国の文化に対する深い理解と、その発信ができる人材の育成を掲げているところに特色がある。リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017不動のミッションと鋭敏な感応性──東洋大学の新学部設置と国際化改革竹村牧男 学長東洋大学C A S E12017年、新3学部のスタート

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