カレッジマネジメント205号
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41リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017の統一と書けば7文字に収まってしまうが、これも、責任組織である基盤教育委員会での、秋山 優教務部長を始めとするメンバーの多大な尽力によって成し遂げられている。前節までで見てきた専門教育の充実とともに、こうした、九産大生として身につけるべき基礎の充実も図られてきたのである。得られた成果とこれからところで、これらの取り組みの成果は、どのように表れつつあるのだろうか。一にも二にも、志願者数の増に表れていることは確認しておかなければならないだろう(図表3)。図表3を見ると、2012年度あたりを境に、V字回復を果たしていることが見て取れる。とりわけ理工系については、2017年度入試で学部志願者が前年度の2378人から3497人まで飛躍的に伸びた。芸術学部・造形短期大学部についても、双方の入学者の漸増や、造形短期大学部から芸術学部や理工学部への編入学が増えつつある等、「シナジー効果が出てきている」(山本学長)。教育改革の成果も、単位修得率の向上などに少しずつ表れつつある。変化はそれだけにとどまらない。藤原室長が語ってくれた兆しは、「基盤教育の授業を通じて学部を超えて学生が交流するようになった」ことである。学部の独立性が高く、まるで複数の単科大学がキャンパス内に同居しているかのようなかつての状況から、名実共に総合大学として生まれ変わった。学習するコミュニティーとしての九州産業大学を支える基盤としての役割を、文字通り、KSU基盤教育は担いつつある。志願者増加や単位修得率の上昇、学生の交流といった学習するコミュニティーとしての充実が奏功したのか、就職率も6年連続で上昇した。かつて、山本学長が抱いた危機感の原因となった各指標が上向き始めている。それでは、次の一歩はどこに踏み出されるのだろうか。これほどの大改革である。並々ならぬリソースがつぎ込まれただろうことは想像に難くない。さすがに一息つく、と思われるが、九州産業大学は立ち止まることをしない。山本学長は、2018年度に予定している文系領域の再編(図表4)についても語ってくれた。商学部と経営学部の統合再編による新構想の商学部、地域共創学部と、新分野を含む人間科学部(2018年4月開設予定(認可申請中))が新たに設置される予定である。地域共創学部は観光学科と地域づくり学科の2学科を擁するが、福岡が観光都市であること、国内でも珍しい人口増地域であることを思い起こせば、その改組の意図はおのずと伝わるものがあるだろう。他方で、その地域づくり学科では、経済学部夜間主コースと商学部第二部が社会人に教育機会を提供してきた伝統を引き継ぎ、昼夜開講の仕組みを採り入れている。これから予定されている改組にも、これまで満たしてきたニーズ、これから満たすべきニーズが考慮されており、まさしく「産学一如」の精神が息づいていると言える。学生アンケートでの満足度も上昇傾向にある。第一志望の学生も増えた。何よりも、入学生から「入ってみてイメージが変わりました」との声が寄せられるようになってきたことが、最大の成果であろう。提供された教育の質は、本当のことしか語れないからだ。活気はこれまで駆け足で紹介してきた、こうした変化に裏打ちされている。その根底には、法人、大学の組織を問わず、また、教員、職員の立場を問わず、自分の役割のなかで、それぞれに社会を見据えながら、そのニーズを満たそうとする人達の努力が基としてある。(立石慎治 国立教育政策研究所高等教育研究部 研究員)図表4 文系領域の再編(構想中)(2018年4月)特集 学部・学科トレンド2017経済学部450名商学部第二部50名商学部第一部550名地域共創学部280名経営学部400名国際文化学部140名国際文化学部200名人間科学部230名現行  1650名2018年度以降 1550名経済学科(昼間主・夜間主コース)450名経済学部400名経済学科400名商学部500名経営・流通学科500名商学科400名観光学科150名国際経営学科200名国際文化学科80名国際文化学科80名臨床心理学科70名商学科50名観光産業学科150名地域づくり学科(昼夜開講制)130名産業経営学科200名日本文化学科60名日本文化学科60名子ども教育学科80名臨床心理学科60名スポーツ健康科学科80名NEWNEWNEWNEWNEW3学部の再編・新設

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