カレッジマネジメント205号
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6リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017本章では、まず1992年から2016年までの24年間に、学科のライフ・サイクルがどのように変化してきたかを分析する。さらに、直近8年間で志願者数が増減した分野に着目することで、募集ニーズの変化の兆しについても考察したい。単独分野から見る学科系統のライフ・サイクルでは、まず学科系統のライフ・サイクルから見ていこう。本調査では、「リクルート入試実態調査」の集計データを基に、2016年時点で国公私立大学が設置していた5136学科について、学科名称や教育内容に照らし合わせ、リクルート独自の12の大分類、78の小分類(図表1)に分類した。この78分類に当てはまった3446学科を単独分野と定義。また、複数の分野が融合していて78分類に当てはまらなかった1690学科643種を、複合分野と定義した。以下、単独分野と複合分野に分けて、分析を行うこととする。まず単独分野だが、縦軸に志願者数、横軸に募集定員数を置き、図表上の矢印で、ライフ・サイクルのパターンがどのように変化してきたかを示したのが、学科系統のライフ・サイクル図である(図表2-1)。さらにここでは、Ⅰ成長期、Ⅱ成熟期、Ⅲ衰退期、Ⅳ撤退期、Ⅴ再成長予兆期という、5つの段階があると仮説を立てた。Ⅰ成長期ある大学が、最初に新分野の学科を設置した時の、募集定員数と志願者数を起点とする。最初の成功例に追従して、他大学が同分野の学科を設置することで募集定員が増加し、志願者数も拡大していく、マーケットの創造段階。Ⅱ成熟期ある分野で募集ニーズが拡大しているため、後追いで新増設が増えた結果、募集定員の増加率が志願者の増加率を上回り、成長が鈍化する段階。Ⅲ衰退期学科の流行が過ぎ去り、別の分野に志願者が流れ始めているのに、志願倍率の高さから新増設が増え続けることで、かえって志願倍率が下がり、需給バランスの崩れた段階。Ⅳ撤退期志願者の減少により、他分野への改組が始まり、最初の学科系統の募集定員数が減少し、マーケットから淘汰される段階。Ⅴ再成長予兆期撤退期が続き、募集定員数が減少する中、様々な要因で志願者数が増加能地泰代/鹿島 梓 カレッジマネジメント編集部経済環境や雇用情勢あるいは政治動向等、社会の様々な要因が受験生の志望分野に関する意思決定に作用し、学部・学科の「ライフ・サイクル」は大きく変化する。本誌編集部では、1992年以降その動きを把握し、約4年ごとのタイミングでマーケットトレンドを分析してきたが、2014年の段階で、安倍政権の政策影響や東京オリンピック開催決定を反映した社会の動きによるものと見られる「兆し」が捉えられたため、節目の機を待たずして、その変化について中間報告を行った(2015年1月発行カレッジマネジメント190号)。そして今回は2年間というさらなる時間の経過とその間の社会情勢、さらには未来に起こりうる社会の変化への期待を踏まえ、また異なる様相を呈している。グローバル化と技術革新の新たな波がトレンドに色濃く影響学科のライフ・サイクルとマーケットトレンド1章

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