カレッジマネジメント206号
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59リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017各種の競争的資金を得たことは、学内を活気づかせたし、キャンパスを移転したことで、各種の事業をより円滑に実施できるようになった。「グローバル人材育成推進事業(現:経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援)」が進行するにつれ、留学を前提とした入学者が増えたという。これらの事業やキャンパス移転が、学生の動向にどのような影響を与えたのだろうか。図3は志願者数の動向をみたものだが、どの学部も2016年度から大幅に志願者が増加している。とりわけ、保健学部と外国語学部の伸びは著しい。この間、保健学部は入学定員を125名増加させており、人気のほどがうかがえる。また、図表は省略するが、すべての学科において志願者が増加している。これはいうまでもなく、キャンパス移転の効果であり、都心という地の利は学生を惹きつけてやまないことがよく分かる。移転以前に問題として指摘されていた中退者はどうなったであろうか。中退者が多い総合政策学部では、2012年の61人から2016年の38人まで着実に減少しているが、それ以外の学部では、明らかな減少には至っていない。しかしながら、中退の多くが不本意進学や無目的進学から生じる現象であるとすれば、井の頭キャンパスへの移転による志願者の増加は積極的な進学者の増加とみることができ、また、グローバル化を鍵とした各種の教育改革が進んでいることも合わせて考えれば、数年のうちには中退者も減少していくことであろう。医学・保健医療系と人文・社会科学系の連携による魅力づくりキャンパス移転と競争的資金による教育改革は「吉」と出たが、学長は手綱を緩めることはしない。今後の大学運営の課題について、短期課題と中長期課題に分けて話をされる。「短期的には、総合政策学部と外国語学部をどのように運営していくかが課題です。特に総合政策学部は、何をやるところなのか、何ができるようになるのか、高校生に分かりやすく見せていくこと、また入学者に対しては、少人数で手厚い教育をし、教育のメリットを実感してもらう工地の利を得て志願者も増加夫が必要です」。確かに、総合政策学部は、井の頭キャンパスに移転して、志願者は前年と比較してほぼ倍増し、1150人に増加したものの、他の学部の増加から見れば少ない。また、医学部、保健学部は国家試験がある医療職養成を学部のミッションとしており、学生生活やその後の将来を見通すことが容易である。外国語学部も語学の習得という点では、何を学ぶのかが見えやすい。それらと比較すると、総合政策学部が考えているものをもっと理解しやすくしていくということになるのだろう。もう1つの中長期的課題については、「現在志願倍率が高い医学部や保健学部が、このまま安泰とは言えません。なぜなら、2030年には医師過剰の時代が到来すると言われています。医師不足が指摘されて医学部は定員90名から117名まで増加しましたが、これも医師過剰ということになれば再編が求められるかもしれません。他の医療職も時代に応じて求められる分野は変化します。それらを勘案して、現在の4学部をどのような体制にしたらより一層魅力あるものとすることができるか、常に考えることが求められているのです」と、学長は語られる。少子化と高齢化のなかでの人口減少。日本社会の未来がたどる経路を見据えることができるか否かで、大学運営が決まる。しかしながら、目先の問題を忘れては将来はない。射程の異なる2つの課題をどのように舵取りしていくか、日本の大学が直面しているのは、まさにこうした連立方程式を解くことなのである。(吉田 文 早稲田大学教授)0200040006000800010000120001400016000外国語学部総合政策学部保健学部医学部全体20172016201520142013(人)(年度)117016662359577954783811931800114011506194506654399426439754149663863337520795212034120541383815041 図3 杏林大学 志願者数の推移特集 進学ブランド力調査2017

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