カレッジマネジメント206号
61/88

61リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017えづらい。正課・正課外を含めて、卒業時にどうなれるのか、をどのように伝えていくかは、今後の大きな課題である。④情報公開が浸透しない。大学ポートレートによって、大学が情報公開を進めていく基盤は整ったが、残念ながらほとんど活用されていない。認証評価制度も、大学の質保証には寄与しているものの、社会的に浸透しているとは言い難く、高校生の進路選択には、ほとんど影響を及ぼしていない。様々な情報をどのように活用していくのかを、その使い方を含めて考えていく必要があるのではないだろうか。一方、大学側から見ると、大学のブランド力は学生募集の源泉に成り得るものである。各大学が、様々な活動(ファクト)を通じて発信している理念やメッセージは、しっかりと高校生に伝わっているのか。図2のように、大学のブランド力は、学生募集を好循環のサイクルを回す基盤となる強力な“財産”である。これまでの進学ブランド力調査の結果を分析してみると、大きく3つのことが分かってきた。まず1つは、景気等の社会環境の変化である。景気が悪くなると、学費の安い国公立のランキングが高まる。そして、資格取得が仕事に直結する学部や、不況時に就職に強いといわれる理工学系を持つ大学のランキングが上昇する。高校生は、家計の状況や就職状況に敏感だ。今回、関東で志願度トップに返り咲いた早稲田大学は、第3志望以下の志願度が上昇している。つまり、景気が良くなってくるなかで、ちょっと無理目の“憧れ校”も志願したいという高校生の思考の変化が感じられる。2つ目は、中長期で改革を進めている大学のランキングが上昇する傾向にあるということである。単発の改革ではなく、中長期的に改革を推進し、“ならではの価値”を継続的に向上させていることが重要なポイントとなっている。今回、関西で初めて志願度同率トップとなった近畿大学や、東海の名城大学は、キャンパスの整備、学部・学科の新設、グローバル化への対応等、継続的な改革を続けている。3つ目は、その改革や価値・個性が高校生に伝わっているかどうか、である。いくら改革をしていても、大学の中だけで伝わっていても意味がない。志願度ランキングは、「改革をした時ではなく、改革が高校生自身にどのような影響があるかが伝わった時に上昇する」ということが分かってきた。例えば近畿大学は、ここ数年、志願する高校生のフリーコメントを見ると、関東や関西の大手総合大学にありがちな、「MARCHや関関同立だから」といった受験産業がつけたグルーピングを支持するコメントは一つもなく、「マグロの研究がすごい」「英語村」「国際学部」といった具体的な内容や、「今一番勢いのある大学」「これから発展しそう」といったコメントが多くみられた。改革の推進と、それを高校生自身にどのように伝えていくのかという戦略も、ブランド力の向上に当たっては重要なポイントとなる。前述したように、偏差値という絶対的な基準が弱まってきたなかで、どのように各大学の個性=“ならではの価値”を伝えていくか。今後は、より良い大学づくりに向けて改革を推進する一方で、対象となる高校生への伝え方も大切になってくるであろう。図2 募集力の源泉となる大学ブランド特集 進学ブランド力調査2017大学ブランドを向上させる3つのポイント理念に共感した志願者滑り止め(偏差値輪切り)志願倍率上昇志願倍率低下選抜非選抜入学者の質の向上入学者の質の低下効率的な教育投資受入時パワー増大教育の質の向上教育の質の低下卒業生評価の向上卒業生評価の低下学生・教職員の満足度向上学生・教職員の満足度低下ブランド力の向上ブランド力の低下好循環悪循環

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る