カレッジマネジメント206号
72/88

72リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017らず、成果を数字で問える時期ではない。ただ、学生アンケート等から手応えは得られている。「兵庫県内で育ちそのまま本学に入学してきた学生が、本当に地域のことを好きか、知っているかと言うと、そうでない場合も多いのです。学生の回答の中には、『兵庫県のことが好きになった』『兵庫県に拠点を置いたビジネスアイデアを探そうと思う』といった気づきの表現は結構ありますね」(髙坂副学長)。一方、神戸大学を申請校に2015年に採択されたCOC+事業は、県内就職率の8%アップを目標に掲げている。しかし地元にどんな企業(就職先)があるかを学生に知らせる取り組みを様々行っても、現在4割弱の県内就職率の急上昇は望めない。そもそも、県内に本社を置く企業に入社する率を追うことに無理もあるという。「仮に地元に就職しても、本学の場合、3年で2割程度が離職する。この離職率の問題は無視できず、もっと丁寧なキャリア支援を心がける必要性を痛感している。他方、東京の大手へ行って失敗して5年後に地元に帰ってくることだってある」と髙坂副学長。そのような元学生に対しても、地元の企業に目を向けさせることを含め、支援の手を差しのべる努力を始めているという。「事業期間内に成果を出すことは非常に重要だが、教育というのは、百年の計と言わないまでも、何年もかかるものだと私たちは考えています」(髙坂副学長)。太田学長は、COCを進めるには「ハートと情熱があり、イニシアティブをとる、核になる人をいかに探すか、やる気になってもらうか」が重要だと指摘しつつ、「本学の場合、核になる人材が沢山おられた。地域連携に前向きな先生がおられたので、わりとスムーズにいったと思います」と、大きな困難は指摘しなかった。しかしもちろん、学部などによる温度差は存在した。髙坂副学長は「例えば、工学部や理学部の理系学部と他の文系学部の間では、地域連携について大きな考え方の違いがあった。そのため、教授会のFD活動を通じて、議論を重ねてきた」と振り返る。髙坂副学長は、COC事業の「これからの1つの大きな課題」として、「PDCAサイクルを回し続ける仕組みづくり」をあげる。「COCフィールドワーク基礎演習で一度地域に入るだけでは『お客さん』で終わりです。PDCAでいう、PDまで。CからAへ行くことを、われわれはもちろん、当然地元の人も期待している。だからサイクルをAまで回し、次のサイクルへと進む制度なりカリキュラムなりをきちんと作ることが、本当の地域人材を育てるためには必要だと考えています」。太田学長は、より大きな方向性として「特色のある、先導的な公立大学を目指していきたい」と言う。その背景にあるのは、世界レベルの先導的な研究がなければ、地域の大学としての生き残りも覚束ないという強烈な危機感だ。特色のある先導的な公立大学を目指すためにも研究を強化国立大学は文科省の方針で「世界」「特色」「地域」という機能分化が指導され、86国立大学のうち55大学が「地域」の大学に手を挙げる結果となった。この状況は、元々地域の大学である公立大学からしてみれば、「地域貢献する大学」の競争の激化と見ることもできるだろう。そういう中での兵庫県立大学は、「先端的な研究をせずに、地域だけをやりますと言ったら、そこである意味もう終わってしまう可能性がある」と太田学長は言い、「バックに高度な研究教育がないと、結果として、公立大学としてのミッションである地域貢献も、たいしたことができなくなると思う」と続ける。幸い兵庫県には、放射光実験施設SPring-8、X線自由電子レーザーSACLA、スーパーコンピュータ「京」など、世界の最先端の研究機関がある。それらと連携して教育研究を進めてきた実績は、今後も兵庫県立大学の大きな強みとなるはずだ。時代のニーズにかなって、10年先20年先を見据えた教育研究ができる組織を作り、特色を前面に出す取り組みにはすでに着手している。例えば、地域資源マネジメント研究科、シミュレーション学研究科、減災復興政策研究科などの独立大学院を次々と発足させている。「経済学、経営学分野でも、第4次産業革命等による社会構造・産業構造の激変に適応できる人材の育成が非常に重要になってくる。そのための組織改革を、髙坂副学長が率いて計画を練っているところです」(太田学長)。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る