カレッジマネジメント206号
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76リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017留学終了後の原則帰国が義務づけられている国家公費派遣留学を拡充している。「国家建設高水平大学公派研究生項目」(Postgraduate Study Abroad Program、以下PSAP)と称する派遣留学プロジェクトは、大学院レベルの一流の中国人学生を選抜し、世界の一流大学の一流の指導教授の下に派遣することにより、人材強国の構築を目指すというものである。プロジェクト開始当初の派遣人数は毎年5000人程度であったが、2017年度の派遣定員は9500人、そのうち海外の大学で博士学位取得を目指す学生数は3000人、中国の大学に籍を残しつつ留学先大学で研究に従事し、帰国後は中国の大学で、あるいは海外の大学と中国の大学の双方において学位取得を目指す「連合育成博士大学院生」の派遣定員が6500人となっている。PSAPの枠組みを通して派遣された中国人学生が留学先大学での研究成果を国際共著論文として発表したり、「連合育成博士大学院生」の指導に際し、中国の大学と海外の大学との指導教員間での共同研究につながるといった事例も報告されている。かつて中国は留学交流において、派遣留学者数が受け入れ外国人留学生数を大幅に上回る「輸出超過」の状態であったが、近年留学先として中国を選択する外国人留学生数が急速に増加している。2010年7月の「要綱」策定を受け、教育部は同年「中国留学計画」を正式に発表し、2020年までに延べ50万人の留学生を受け入れるという数値目標を掲げた。目標達成に向けて、留学生対象の教育プログラム(英語を教授言語とするプログラムを含む)の増設、中国政府奨学金の拡充、留学生を対象とした教育サービスの向上等の施策がなされてきた。さらに2016年には、習近平政権下での「新シルクロード」・「一帯一路」構想を受けて、教育部は「シルクロード留学推進計画」を策定し、「一帯一路」構想の関係国を対象とした中国政府奨学金を拡充する等、新政権の経済・外交戦略に沿った留学生政策を打ち出している。教育部の統計によると、2016年度には205の国や地域から44万2773人の外国人留学生が、中国全土の829の高等教育機関や研究機関に在籍している。留学生の出身国上位10「一帯一路」構想・シルクロード留学推進計画カ国は、韓国70540人、米国23838人、タイ23044人、パキスタン18626人、インド18717人、ロシア17971人、インドネシア14714人,カザフスタン13996人、日本13595人、ベトナム10639人となっているが、2016年の統計で特に注目されるのが「一帯一路」構想の関係国からの留学生の動向である。胡錦濤政権時の2012年との比較において、パキスタン、カザフスタンからの留学生数の増加が著しい。言うまでもなくパキスタンは中国にとって地政学上極めて重要であり、中央アジアの資源国カザフスタンは、中国の中西部の民族問題との兼ね合いからも国益に直結する重要な隣国である。教育部の統計によると、2016年度の中国政府奨学金受給者49022人のうち、奨学金受給者数上位10カ国は、パキスタン、モンゴル、ロシア、ベトナム、タイ、米国、ラオス、韓国、カザフスタン、ネパールとなっている。中国政府奨学金受給者全体に占める「一帯一路」関係国からの留学生の比率は61%、2012年度との比較において、8.4%の増加が見られる。図2 国家発展戦略としての中国の高等教育政策国家発展戦略としての経済政策・外交・文化政策経済・社会のグローバリゼーション知識基盤社会の到来国際競争の強化高等教育全体規模の拡大教育の質の向上に向けた取り組み国際化の推進産学連携の強化重点大学を世界一流大学に引き上げる施策211プロジェクト985プロジェクト

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