カレッジマネジメント206号
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85リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017界に広げ、組織に籠ることなく、これらと積極的に関わりあうことも必要である。視野の広さやより先を見通す目を養うことで、部長として固有の役割を果たすことができる。最後は人材育成である。第一線の職員育成についても課長に任せればよいというわけではない。課長層の育成を含めて、部長が人材育成に強くコミットすることが不可欠である。「シニアマネジャーの最大の責務は人材育成」と言い切る世界のエクセレントカンパニーも少なくない。以上、述べたことを改めて整理すると、1)トップの方針伝達と業務遂行の指導・助言2)トップによる構想や決定に対する補佐・助言3)部内外の調整とプロジェクト創出4)ステークホルダーや社会との積極的な関わり5)人材育成の5つが部長の基本的な役割となる。重要なことは、部長には課長とは異なる固有の役割があるということである。ただ単に2つの階層を重ねるだけの実態ならば、いずれかの層は不要と言われて仕方ない。人材育成は部課長が協力して重層的に行っていく必要があるが、それ以外の機能は部長と課長で明確に異なることを十分に踏まえておく必要がある。これらの役割を担うための能力については、課長と重なり合う部分も多い。つけ加えるべきは、課長とは異なる部長の役割に対する理解、視野の広さと視点の高さ、より先を見通す目である。以上を踏まえて、強い部課長の育成の在り方について考えてみたい。まず、本稿で述べた事柄なども参考に、大学ごとに課長の役割、部長の役割とそれぞれに求められる能力を明確にすることが全ての出発点となる。そのうえで、既に部課長の地位にある職員の育成とこれから部課長を目指す職員の育成を分けて、その在り方を検討することが望ましい。特に、早急に前者に着手する必要がある。既に部課長の地位にある人材の意識を変え、能力強化を図らない限り、大学運営の高度化は進まないし、将大学・団体の枠を超えた教育プログラムの再構築来の部課長人材も育たないからである。そのためにも、既に課長の地位にある職員、部長の地位にある職員全員のアセスメントを行い、それぞれに課長の役割、部長の役割をどの程度果たせているか、教育訓練によりどれだけ能力を伸ばせるかを客観的に見極めなければならない。そこで一定の評価を得た者は、組織単位長(ライン長)としての課長職または部長職にとどめ、組織を統率することに課題ありと判断された者は課長相当または部長相当のスタッフ職として活躍の場を与えるという人事措置を講じることも一つの方策である。その際、後者に対する動機づけは特に丁寧に行う必要がある。そのうえで、課長職向けと部長職向けにそれぞれ研修プログラムを組み、ライン長かスタッフ職かにかかわらず、全ての課長職と部長職にその受講を義務づける。例えば、課長職向け研修プログラムは、前述の5つの能力の獲得を目的とした内容とし、日常業務を継続させながら、半年程度をかけて、講義の受講、グループ討議、レポート作成を計画的に課していく。具体的な方法は大学ごとの事情を踏まえて工夫すればよい。その際、各人の研修への取り組み方や受講成果をその後の人事計画に反映させることが有効と考えられる。そのことで研修に臨む受講者の姿勢もより真剣味を増すだろうし、研修を通じて個々人を多面的に観察することもできる。部長研修は、課長研修プログラムの中から、部長職にも有益な講義を選ぶとともに、部長固有の役割を果たすための考え方、視野の広さや先を見通す目等を養うことを目的とした講義やグループ討議を加え、同じく半年程度かけて実施していくのが望ましい。研修の最後に、自校が抱える課題とその解決策を提案させることも有効な方法である。とはいえ、このようなプログラムを独自に開発できる大学は限られるであろう。一方で、大学、大学団体、コンソーシアム、民間団体などが多種多様なプログラムを提供しているが、同じような内容であったり、単発的であったりで、本稿の趣旨に合致する体系的プログラムは少ない。我が国の高等教育を担う人材育成のため、大学・団体の枠を超えた教育プログラムの棚卸しと再構築が急務である。

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