カレッジマネジメント207号
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16高大接続システム改革における大学入学者選抜改革の趣旨は、各大学の選抜において、ディプロマ・ポリシー(DP)、カリキュラム・ポリシー(CP)をふまえたアドミッション・ポリシー(AP)に基づき、「学力の三要素」(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」)を多面的・総合的に評価するものへと改善することにある(文部科学省「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」平成29年7月13日)。なかでも、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(以下、主体性等)については、その評価方法として小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、推薦書、大学入学希望理由書、資格・検定試験、各種大会や顕彰の記録、学修計画書等を活用した選抜方法が考えられるが、志願者数が多数となる一般入試においては、こうした評価方法での選抜を実施することが、時間面、費用面、人員面の制約で困難であるとの指摘がある。大学入学者選抜改革については、メディアでは共通テストの記述式導入や英語4技能の評価について焦点が当てられているが、大学入学者選抜改革の趣旨をかなえるために最も困難であり重要な課題と言えるのが、この「主体性等」の評価であると言っても過言ではない。平成28年度からの文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)において、「各大学の入学者選抜改革における課題の調査分析及び分析結果をふまえた改革の促進方策に関する調査研究と『主体性等』をより適切に評価する面接や書類審査等 教科・科目によらない評価手法の調査研究」に、代表大学として関西学院大学が、協力大学として大阪大学、大阪教育大学、神戸大学、早稲田大学、同志社大学、立命館大学、関西大学がコンソーシアムを形成し調査研究に取り組んでいる。この事業は「個別大学の入学者選抜の改革において、国公私立の別を問わず、各大学の方針に基づき、受検者を多面的・総合的に評価するための入学者選抜改革の取り組みの進展に資する」ためにある(文部科学省「高大接続改革の進捗状況について」参考 平成29年7月13日)。こうした重要なミッションを帯びた委託事業の期間は3年間。この期間に各大学が活用できる「主体性等」をより適切に評価する面接や書類審査等、教科・科目によらない評価手法を開発する必要があるのである。これまでの大学入学者選抜、特に多くの大学の一般入試では、多数の受験生に対して短期間で合否判定できる効率性を重視してきた。従って教科・科目の学力検査の得点のみに依拠し、数値で採点結果を出せる問題を用いた試験を、公平で客観性のある選抜として実施する傾向にあった。これからの学力の三要素を多面的・多元的に評価することが求められる選抜では、従来型の「公平性・客観性」から、多元的な評価に対する「妥当性・信頼性」の確保が求められる。「妥当性・信頼性」を確保するためにAPを定め、選抜基準を入試要項等で明らかにすることが求められるのだ。DP及びCPをふまえ、「学力の三要素」を念頭に置き、入学前に「どのような能力を、どのようにして身につけてきたリクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017主体性を評価する仕組みはどこまで進んでいるのか文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)の進捗状況はじめに─大学入学者選抜改革における「主体性等の評価」大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)「主体性等」の評価とアドミッション・ポリシー尾木義久 関西学院大学 学長特命寄 稿

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