カレッジマネジメント207号
19/70

19リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017する。また高校の先生方にも登録をしていただき、高校のパソコンからアクセスできるようにする。生徒は入力した情報について、先生にポートフォリオで承認依頼を行い、高校の担任の先生がその内容を承認する。これらの主体性等に関する情報を活用して、平成30年度(2018年度)に実施する入試での実証事業をコンソーシアム大学はじめとする多くの大学で実施をする見込みである。各大学はポートフォリオに蓄積されたデータを生徒の大学出願時に取得し、前項に示した評価手法により選抜を実施する(ここで大学は、高校教員が承認したデータについては、選抜における主体性等に関する煩雑なエビデンス確認の業務を効率化でき、時間面、費用面、人員面の課題をクリアすることができる)。これにより大学側は志願者が多数である一般選抜入試にあっても、事前に生徒の主体性等に関する情報について評価基準を定めてレベル毎に得点を決定しておき、コーディングされた主体性等に関する情報を入手後、自動得点化を行うなどすれば、短期間に教科・科目の試験の得点に加えた合否判定ができるようになる。総合型選抜(AO入試)、推薦型選抜(推薦入試)においても、これまで以上に豊富な情報をもとにきめ細やかな選抜を行うことが可能となり、生徒の学びのプロセスを評価する入学試験が可能となる。システムの詳細については、ここでは詳しくは述べないが、重要な点の一つはこれまでに活用できていなかった調査書等に記載された主体性等のデータがポートフォリオによってディジタル化され選抜で活用できるようになること、そして、これを活用してPDCAサイクルによる3つのポリシーによるマネジメントの評価、評価に基づく入試改革や教育改革が可能となることである。このポートフォリオの活用は入試活用だけに止まらない。高校段階での学びのデータを活用することにより、大学の初年次教育、導入教育に利活用することも可能である。さらに前述の通りIRを活用した選抜改革が求められているなかで、高校での学びのデータを有益に活用することができ、入試制度に関する評価が可能となる。入学後の学生の成績や活動実績、留年・中退率、卒業後の進路等について追跡調査を行い、評価基準・方法の妥当性を検証、入学後の学生の追跡調査のデータと、このポートフォリオから取得したデータを用いて、APに基づいた入学試験制度が構築できているか、目指す生徒が確保できているか等を検証し、入試改革はもとより大学教育改革につなげることが可能となると考えている。高校についても、平成33年度入試以降の大学入学者選抜で調査書の記載内容の充実が求められている。このポートフォリオを活用することで、例えば高校3年次の担任が自分の受け持つ生徒の高校1年次、2年次の情報をつぶさに把握し、これをもとに推薦書など大学入試において提出する書類を作成できる。特に学習指導要録作成業務そして調査書作成業務の負担の軽減につなげることができると考えている。また教育支援のツールとしても、生徒のふりかえりから、教育プログラムの改革等に活用することが期待される。さらに、調査書のディジタル化に向けたプラットフォームとしての機能も期待できると考えている。今後の課題であるが、まずは高校でのICT環境の整備が挙げられる。特に高校の先生方の学習指導要録、調査書・推薦書等の作成に関わる負担を減じるためにこのポートフォリオへの期待があるが、校務システムのシステムセキュリティのため、ポートフォリオの情報を活用することが事実上できない場合がある。制度上の問題だけではなく自治体の財政上の問題もあり、克服すべき最も重要な課題であると言えよう。大学側については、平成33年度入試で学力三要素の評価に向けた改善が示されており、平成37年度入試では、主体的、対話的かつ深い学び等アクティブラーニングが拡大する新学習指導要領で学んだ生徒達が受験することになる。そのようななかで、各大学で様々な課題をかかえつつも、学力三要素の評価を行う丁寧な選抜へ移行する必要があろう。志願者をひたすら集め志願者数を競う入試から、「一人ひとりを見つめる入学者選抜」へ転換することができるのかが問われている。このシステムは委託事業3年目にして実証事業を行い、4年目には本格稼動となる。委託事業で完成ではなく、今後も高校現場をはじめとする受験関係者、入試に知見を持つ大学教員を中心にしながら、オールジャパンの体制でシステムを成長させ続けていくことが必要である。むすび─高校eポートフォリオのもつ可能性と課題入学者選抜特集

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る