カレッジマネジメント207号
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20“Men and Women for Others, with Others”、上智大学の教育精神である。1913年にカトリック・イエズス会の宣教師によって設立されたことに由来する不変のミッションであるが、現代にこそ必要な理念ではないか。というのは、市場原理にもとづくグローバルな経済競争、その競争の勝敗が生み出す排外主義が横行するなか、相互の異質性を認めて他者を理解し、他者と対話し協力を重ねることは後景に退きがちだからである。上智大学は、「隣人性」と「国際性」を持った者の育成を掲げてきたが、それは、現在、とりわけ重要になっているように思う。では、そのミッションを実現するための環境をどのように構築するか。それは、9学部29学科、1万4000人もの学部・大学院生を、四谷キャンパスに集めることであった。都心の一等地にある四谷キャンパスは、決して広大というわけではない。それにも拘わらず、そこに全学生を集めるのは、上記のミッションを実現するためなのである。その理由について、曄道佳明学長は、次のように話される。「For Others, with Othersを実現するためには、キャンパスそのものに多様性を持たせることが必要なのです。エスニシティ、出身地域などの多様性、そこから派生するこれまでの生活経験の多様性、そして将来に対する志の多様性、色々あります。隣人性や国際性を強調しても、その環境がなければそれを体得することは容易ではありません。そこで、あえて全ての学部・学科を同一キャンパス内に置くことで、学生が自然に多様な他者と触れ合うことができるようにしているのです」。確かにこうすれば、キャンパスそのものが、おのずとグローバルな環境になる。上智大学に入学した学生は、四谷キャンパスという限定された空間において、その空間をはるかに超えたグローバルな日常を経験できるというわけだ。日本の大学や学生のグローバル化が政策課題になったのは、2000年代半ばからである。もともと国際性を大学の特色としてきた上智大学は、この政策要請をうまくつかみ、大学全体のグローバル化へと明確に舵を切った。それは、文部科学省が打ち出したグローバル化関連の競争的資金事業に、ことごとく採択されていることが1つの証左である。採択された事業を年次順に並べると、2009年の「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(グローバル30)」(13校採択)、2012年の「グローバル人材育成推進事業(タイプB:特色型)」(31校採択)、2013年の「大学の世界展開力強化事業(ASEAN)」(7校採択)、2014年の「スーパーグローバル大学創成支援事業(タイプB:グローバル化牽引型)」(37校グローバル化へ舵を切るリクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 201720年先を見据え社会で必要な英語4技能と思考力を測る「TEAP利用型一般入試」曄道佳明 学長For Others, with Others上智大学C A S E1

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