カレッジマネジメント207号
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23リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017全ての得点を用いることは、志願者の増減の点から言えばややリスクが高いように思えるのだが、結果はいかほどであろう。まず、TEAP利用型一般入試志願者の志願者全体に占める比率は、2015年度28.7%、2016年度16.7%、2017年度15.2%である。一部の学科が4技能を導入した2016年度は、確かに前年比でみれば、志願者は大きく減少しているが、これは2015年度が初年度効果であり、2016年度の志願者が減少するのは想定内であった。むしろ、2017年度に全学科で4技能を導入したことで、志願者が大きく減少するのではないかということを恐れていた。しかし、杞憂であった。志願者は4634人から4460人へと微減であることが特筆される。それを学部別にみた図表2からは、志願者が減少したのは、法学部、経済学部及び理工学部のみであり、それ以外の5学部では逆に志願者が増えていることが分かる。また、2016年度から4技能を課している9学科では、いずれも2017年度に志願者が増加している。とりわけ大幅増となったのは、総合グローバル学部総合グローバル学科(241名増加)、法学部国際関係法学科(189名増加)、文学部新聞学科(134名増加)であり、いずれもグローバルを志向する学科である。従って、TEAP利用型という方式に魅力を感じて、それを利用する学生層は確実に存在するといってよい。ところで、大変興味深いことに、TEAP利用者のReading+ListeningとWriting+Speakingの相関は高くはないそうだ。受信に相当するReadingやListeningができても、発信に相当するWritingやSpeakingが連動してできるというわけではないようだ。その意味でも4技能を課してオールラウンドな英語力をみることには意味があると言う。また、TEAP利用型一般入試で入学した学生の英語力が高いことはもちろんだが、入学後のGPAも高い傾向がみられるそうだ。それは、新しい入試形態にチャレンジする学生は何ごとにもチャレンジ精神が高いのか、思考力を測定する入試を経ているため学問への取り組みが熱心なのか、このあたりは今後の検証課題であろう。いずれにせよ、TEAPが大学からみた高校との間の壁を低くしたことは確かであり、上智大学としては、今後もTEAP利用型一般入試の志願者を増やしていきたいと考えている。ただ、TEAPの受験料は4技能で1万5000円と決して安くはなく、また、会場や採点者の確保という課題、TEAPを運営している英検協会は今後もクリアしていかねばならない。高い資質を備えた学生を確保することを目的として始まったTEAP利用型一般入試であるが、これは、上智大学の2期目の長期計画である「グランド・レイアウト2.0」に沿って導入されたものだ。これは2014年から2023年までの10年間にわたる計画であり、始まって4年目となる。今後の上智大学を「グランド・レイアウト2.0」にもとづき経営することはもちろんのことであるが、それだけではないと学長は話される。興味深いのは、一方で10年計画は長すぎ、他方で20年先の将来を見据えねばならないと考えておられることだ。10年計画は基本計画としては良いが、社会の変化は激しくそれに対応するためには、必要に応じた見直しも視野に入れておきたい。他方で、社会変化の激しさは、20年先を予測することを困難にしている。しかしながら、大学は20年先の社会を支える者を教育する場であり、20年先を見据えた教育を考えねばならないと言うのである。そのために、上智大学では、学生の教育を以下の2側面から構成している。一つは、学問を教授することである。古来よりの叡智が体系化された学問は、人間に思考の方法を教えてくれる。これは社会変化によっても揺らぐことはない。これが学部学科で実施されている専門教育である。これが縦に伸びるものだとすれば、もう一つは、横に広がる教育である。グローバル教育センターで実施している、グローバル社会のリーダー育成のためのグローバル・コンピテンシー・プログラム、国連や企業でのインターンシップ、データサイエンス・プログラム等がそれである。社会変化に対応できる力、新たな価値を創造する力、イノベーションを起こす力等の涵養を考えている。20年後の社会に生きる者が、まさに縦横無尽に活躍してくれることを期待しての構成である。「これからは私立大学が個性を発揮するチャンスです。上智大学もチャレンジを続けます」。学長の決意は固い。20年先を見据えた教育のために(吉田 文 早稲田大学教授)入学者選抜特集

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