カレッジマネジメント207号
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33開し、2003年度文部科学省の特色GPにも採択された、21世紀プログラム(以降、2プロ)だ。小誌では184号にて2プロを取材している。詳細は紙幅の都合上割愛するが、「専門性の高いゼネラリスト」をキーコンセプトに、その名の通り、21世紀を担う人材育成を志向した教育プログラムで、学生は特定の学部に属さず、全学部で開講されている授業を自らの興味関心に合わせて自由に履修し、学んだことを様々に組み合わせてオリジナルの「知識」を形成していくというもの。設立当時の日本の高等教育を取り巻く状況を掻い摘んでいうと、18歳人口は1992年205万人と近年のピークを迎えて以降減少が進む一方、大学進学率の向上により大学が徐々にユニバーサル化し、2002年工場等制限法廃止による都市部への大学移転、2004年国立大学法人化等、情勢が目まぐるしく動いていた頃である。世の中の動きが激化するのに対応し、伝統的な学部教育の楔となる新たな教育体系として注目を集めた。共創学部は2プロを継承し、さらに学部教育へと発展昇華するもので、定員数も約4倍の規模となる。詳細を見ていこう。共創学部で扱うテーマは「地球的・人類的課題」である。特に既存の学問的アプローチでは手詰まりを起こしているグローバルな事象、即ち経済や環境汚染、生態系や文化保全、感染症や宗教民族対立に至るまで、対象は非常に幅広い。多種多様な課題に対し、一つひとつに対応する学問を用意するだけでは当然足りない。必要なのはそれらを編集統合する力である。共創学部では2プロで培った他学部との協力体制のもと、精通が必要なあらゆる多様な学問が併存する百科事典のような学部構造で、人文科学・社会科学・自然科学の既存学問分野を横断・融合する学際融合型の科目履修が基本となる。既存の枠組みでは捉える課題に対して統合イメージが湧きにくいこともあり、共創学部では地球的・人類的課題の存在する4つの「エリア」(領域)を設定した。「人間・生命エリア」では、生命の発生・進化や人間の思考・認知の仕組み等を、生物学・認知科学・脳科学等を通じて学ぶ。「人と社会エリア」では言語の仕組みや歴史、多文化共生、社会における生活実践としての福祉、宗教観「学びの枠を、超えろ」等を、社会学・文化人類学・コミュニケーション学等を通じて学ぶ。「国家と地球エリア」では、国家や地域の歴史、経済・社会現象、政治と経済等を学ぶ。「地球・環境エリア」では、資源や環境変化による災害、生命が環境に与える影響等を、惑星科学、社会・安全システム科学、生物学等を通じて学ぶ。そして4エリアを横断するかたちで、「デザイン思考」「データサイエンス」「グローバル・ヒストリー」等の共通科目履修が義務づけられている。九大は大学院を中心としたリサーチユニバーシティであり、全国でもいち早く大学院研究科を学府(大学院の教育組織)と研究院(教員の所属する研究組織)とに分離したことでも知られる。教育組織と研究組織を分け、教員がどの学部学府に教えるのにも制限がない。教育と研究相互の柔軟な連携が可能なのは、こうした制度的基盤によるところも大きいという。なお、小山内副理事は、「共創学部は九大の22部局から集めた教員で教育プログラムを構成しますが、扱う事象によってはそれだけでは足りないかもしれません」と含みを持たせる。2プロを開始した頃よりさらに高度化したグローバル社会に対応し、複合的な問題解決に当たるには、自ら知力気力体力を総動員して能動的に考え解決策を講じる力と、他者と協働し経験を積む力、双方のアプローチが必要となる。そのため全学協力体制により、入学定員105名に対し70名以上もの教員が配置される手厚い教育環境を整備した。共創学部にかける大学執行部の思いが伝わってくるようだ。こうした環境整備が可能なのは先端知が結集する研究型国立大学ならではであろう。共創学部のカリキュラムの概要を図表2に示した。九大には全学基盤教育として「基幹教育院」が存在する。「学び方・考え方を学ぶ」姿勢を涵養するための専門組織だ。全学部1年次は基幹教育科目の履修が必須であり、ここで自ら問いを立てて主体的に学ぶアクティブ・ラーナーとしての基礎力をみっちり鍛える。共創学部にはそれに加え、英語インテンシブコースという徹底した語学教育を設けている。グローバルに展開する事象を扱う以上、語学力の修得は土台となるスキルである。日本人学生が学術英語も含め徹底的に叩き込まれる一方で、留学生は同様の日本語プ課題解決の礎となる知力と語学力リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017入学者選抜特集

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