カレッジマネジメント207号
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35リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017(本誌 鹿島 梓)作業に違いないが、本当に共創学部で学びたい人を採るためには、手間は惜しまないという。一般入試では人類が直面する諸問題に関する小論文も出題予定で、付け焼き刃では到底対応できない日頃の問題意識や思考力を測る設計である。最も共創学部を象徴するのは、2プロでの実績を継承したAO入試だろう。一部見直しが入ったものの、2日間に渡る手厚い選考という意味では変わらない。まず初日は講義の受講とレポート作成である。文系と理系の2領域で、講義とレポート140分を2セットこなす。2日目午前は当日朝に提示される2つの講義の論題について、180分のグループ討論を行う。他人の意見を聴いて理解し、そこに自らの視点から意見を加えていけるかが肝だという。午後は240分の小論文と、その合間を縫って15~20分の個人面接が行われる。小論文は講義論題に関連した課題を自ら設定し、ここまでの選考で学んだ内容を踏まえて論を展開することが求められる。こうしてみると、まさに共創学部の教育内容に適した学生を選抜するために必要な要素が詰まったタフな入試だということが分かる。いずれの選考方法も、学部の学びに先立ち基盤となる高い知力が求められるのに加えて、高校までの自らの実績反芻と大学以降の教育への期待を両方磨き、それをアピールできなければ合格は難しい。大学教育の内容に備えて高校で何を学び、どう志向性を育んだのかを問うための入学者選抜というわけだ。まさに教育と入試の両軸で有機的に接続を測る試みである。共創学部では、かつて2プロで掲げた「専門性の高いゼネラリスト」に地球的・人類的な課題解決を付したことで、学ぶ内容も領域も、整理されて格段に広がったように見える。4年間の学部教育だけでは収まりきらず、大学院も含めた6年教育で設計していく可能性もありそうだ。学ぶ範囲や内容によって最適な年数や教育方法は異なり、フラットに組み立てる必要があろう。今回お話をうかがう中で、小山内副理事からは「挑戦」という言葉が多く出された。九大は既存の学部教育や国内の高等教育のあり方そのものに疑問符を投げかけ、改革の先陣を切った。短期的な成果だけで測るものではないものの、グローバルに入り組んだ社会状況、非連続に起こる将来課題に対して、その根源に迫る解決の担い手を育成輩出することは、既存の思考回路ではなかなか難しい。九大はそうした現状を憂い、だからこそ現状打破の一手を志向するのであろう。常に未来を見据え、国内の大学教育に一石を投じる「挑戦」の成果を、ぜひ心待ちにしたい。常に未来の課題に挑戦する図表3 入学者選抜における視点と入試の整理九州大学新入試QUBEの4つの類型共創学部で実施する4タイプの入試Ⅰ大学適応力重視型入試(21世紀入試発展型)AO入試推薦入試国際型入試一般入試入学者選抜における4つの観点主体的自律性協働的学習能力多角的思考力国際的視野共創学部で身につける能力・態度能動的学習能力課題構想力共創的課題解決力協働実践力国際コミュニケーション力Ⅱ加速学習型入試(高大連携型推薦入試)Ⅲ国際経験・英語力重視型入試(国際型入試)Ⅳ記述学力重視型入試(バランス型)入学者選抜特集

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