カレッジマネジメント207号
38/70

38リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017佐賀大学が入学者選抜の再検討を開始したのは2012年頃、文科省に高大接続特別部会が設置される前だ。背景にある課題意識はどういうものだったのか。アドミッションセンター(以下、センター)の西郡 大教授は、「当時の主な課題は、18歳人口減少の中で入学者の質をどのように維持するかでした」と話す。議論の方向性は2つ。1つは、現行制度で評価できている点とそうでない点は何かという現状分析。もう1つは、本来どんな要素を評価すべきなのか、どんな人材を獲得すべきなのかという観点である。1つめの現状分析は、同時期に学長直下に設置されたIR室が担っている(西郡教授がIR室長を兼務)。学生の成績や成長度合い等について、経験則や肌感覚であったものをエビデンス化し、入試経路や評価方法等との関連性を分析していった。当時の佛淵孝夫前学長の「根拠ある経営を」との理念に基づき、徹底的に数値化や可視化を行うことで、学部や立場の異なる部署との議論でも共通言語を得たという。もう1つの議論の発端は現場にあった。教員達がもつ「かくあるべし」と描く社会人に育てるためには、従来の学力評価だけでは無理があり、その分現場に負荷がかかっていた。「やはり実社会で通用するかどうかですね。われわれは地方の国立として、地域の人材育成輩出を担うべき立場にある。学問追究だけでなく、社会で自ら修めた学問を活かした貢献を強く求められています」。ギャップを埋めるための議論は本来入学段階で必要なスキル・スタンスとは何か、即ち、アドミッションポリシー(AP)の再検討へと行き着く。それまでのAPは育成人材像を謳う一般的な内容だったが、学部ごとに育成すべき人材像を要素分解してAPを再設計した。その議論のなかで、「輩出すべき人材像」「それを育成するための教育プログラム」も合わせて話し合っていく。国の制度改革の一歩先行く動きを試行錯誤するなか、結果的に3ポリシーの見直しを行っていたことになる。スピーディーな議論の裏には、センターによるファシリテーションの妙があるようだ。「学部APであっても必ず原案をこちらが作り、それをもとに各部署で議論してもらいます。現場の意見を反映しながら、大筋がずれないように交通整理を行い、議論を重ねています」。佐賀大学の場合、ガバナンスを効かせたい組織は概ね学長直下に配置されているようだが、実務運用は現場に配慮しつつ目的を果たす、絶妙なバランスで成り立つといえよう。入学時点でどんな人材が欲しいのかが定まれば、次は入学者選抜制度との整合性の検証と再設計である。佐賀大学の高大接続における柱は3つ。①佐賀大学版CBT(Computer Based Testing)、②特色加点、③継続・育成型高大連携活動だ。概要は図表に示したが、それぞれ詳しく見ていこう。まず「佐賀大学版CBT」は、2つの側面から議論されている。1つは地方国立大として、立脚する地域の特性を活かした大学運営を行うという、地域軸の側面だ。佐賀県はいわずと知れたICT利活用先進県。2011年度には「先進的ICT利活用教育推進事業」を県の最重要施策に位置づけたほか、2014年には県立学校の新入生徒全員に1人1台の情報端末導入を開始する等、全国に先駆けた動きが話題にもなっている。佐賀の大学としては、その流れと環境を活用しない手はないと多様な側面から設計された高大接続事業独自のCBT開発を含めた入試・教育面両軸からの高大接続改革西郡 大 教授佐賀大学正しい危機意識と現状分析が国の動向に依らない改革へ

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る