カレッジマネジメント207号
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40リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017本号の事例・リポートでも見てきたように、昨今の入学者選抜改革は多様を極める。なお、小誌は203号から「高大接続の入学者選抜」を毎号連載している。その特別編として、本稿では多様化する入学者選抜の概要整理を試みたい。図表1に、佐賀大学アドミッションセンターの西郡教授が整理したAO入試の類型化を示した(小誌197号より再掲)。西郡教授は「重なり合う部分もあり、また全ての入試がきれいに類型化できるわけではない」としながらも、横軸に「目的」、縦軸に「アプローチ」を置くことで、導入目的に応じた4つの象限に分けることができるとしている。象限①は「お見合い型」。大学と相性の良い学生を「発掘」するマッチング型入試である。従来の面接による選考の多くはこれに当たる。海外ではアイビーリーグ等で一部卒業生が面接対応に駆り出されているケースも見られるが、大学の雰囲気や校風に合致した人材を選ぶのに卒業生は有効な手段のひとつであろう。もちろん、大学教育の独自現状の入学者選抜を4象限で俯瞰する性が確保され、その大学ならではの価値を卒業生が獲得できていることが前提となる。象限②は「マッチング醸成型」。発掘より育成の方向性で、入試受験までに複数回の接触を繰り返し、受験生自身の自省や大学へのロイヤリティを深めていく類型である。事例として取り上げた追手門学院大学のアサーティブ入試等がこれに当たる。複数回接触する意味づけや人的リソースの配置が難しい点はあるが、受験生が持つ本来の志向と実情のすり合わせを丁寧に行うことで、その後のスタンスがぶれなくなり、入学後の成長を見込める側面は大きい。象限③は「多様人材獲得型」。入学後に高いパフォーマンスを発揮し、他の学生に好影響を与える牽引人材を発掘する入試である。これまでに導入されているお茶の水女子大学の新フンボルト入試、九州大学21世紀プログラムのAO入試等、国立大学で多く見られた類型だが、p.42以降のリストでは東京女子大学の「知のかけはし」入試、神田外語大学のプレゼンテーション入試や、早稲田大学が全国から集まる多様な学生を基盤とした教育に取り組むための新思考入試も、この傾向が強い。近年企業ではダイバーシティの推進が叫ばれているが、多様性確保は人事戦略ではなく経営戦略であり、どういう事業運営をしていくかに拘る重要項目のひとつだ。大学でも多様性確保は学習活動の活性化に当たるものと捉えられつつある。従来の学力偏重入試では金太郎飴のように似たタイプの学生比率が高くなるというのは、現場の実感値としても高いようである。象限④は「教育プログラム一体型」。学部学科等の教育プログラムの内容設計から、その教育を実践遂行できる人材を獲得するために入試制度を設計するものである。創価大学のPASCAL入試は全学的に多様化する入学者選抜の現在入学後のミスマッチを抑制するために、入学試験までの接触を通じてマッチング意識を醸成することで、自大学と相性の良い学生を育成するもの。教育プログラム(あるいはカリキュラム等)と入試を一体的に捉え、同プログラムを遂行できる人材を獲得して育成していこうとするもの。入学後のミスマッチを抑制するために、自大学と相性の良い学生を探し出そうとするもの。学習活動の活性化を目的に、他学生へ好影響をもたらすような新たなターゲット層を設定し、同ターゲットに合致した人材を発掘しようとするもの。お見合い型発掘志向マッチング志向ターゲット設定志向育成志向マッチング醸成型多様人材獲得型教育プログラム一体型図表1 大学入学者選抜改革の方向性による分類象限①象限②象限③象限④リクルート「カレッジマネジメント」197号より高大接続の入学者選抜特別編

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