カレッジマネジメント207号
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58リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017ない等、日頃の食生活の残念な感じが絡むことが多い。現場の感覚として、日常の食生活は子ども達が接しているリスクとしてとても大きいのです。食を理解した養護教員というのは私たちの強みだと思っています」。女子栄養大学の産学官連携はこれまで、企業・団体、自治体、教育機関・団体、高等学校を合わせて150件近くに及ぶ。その始まりは2006年の埼玉りそな銀行との包括連携協定だった。取引先企業を主な対象に、栄養、健康増進、商品開発等のテーマの講演から始めて、商品開発やメニュー開発に広がっていったという。講演や勉強会で終わりという産学官連携も少なくない中、件数が増え、内容も学生の教育も含めた商品開発等へと発展していった理由を、染谷常務理事は「企業がちょうど求めてきていた時代だったのでは」と言う。「当初は、食関係の部門があっても栄養士や管理栄養士を採用していない企業がほとんどでした。それだけ栄養士等に対する認識がなかった。栄養大学というのがあると認識されて、自社やその商品が健康増進や栄養とどう関わるかを考えて頂けた」。自治体については、2000年に政府が「健康日本21」を打ち上げ、続いて2002年に健康増進法ができたという流れがあった。自治体は健康増進に取り組まなければならなくなったが、どうしたらいい分わからず困っていたと染谷常務理事は見る。産学官連携の取り組みは、まず学生達のモチベーションに好影響を与えた。以前は病院や学校にほぼ限られていた栄養学を生かす場が、会社関係にも広がり、食の世界や健康産業で広く活躍できると分かったことが大きい。「例えば食文化栄養学科は、学生が実習やインターンシップでお店や会社に行って、自分の考えたものが商品化されていく過程を学びます。そこにすごく効果がある。自分がどういう勉強をしていったらいいか理解するようになり、日本だけではダメだと考えて英語やフランス語を学びに外部のスクールにまで通ったり。アルバイトの選び方等にも影響があるようです」(香川学長)。また、教員の視野が広がったことも見逃せない。「連携によって、社会でこんなに広く活躍できるということが、かなり分かってきた。就活支援もそういう視野でできるようになったし、連携もいっそうお手伝いするようになった」(染谷常務理事)。産学官連携は、大学の知名度を上げ、就活にもつながる大きなプラスになっていると染谷常務理事は言う。「教育力がちゃんとあるから、連携によっていい商品ができ、商品の知名度が上がる。すると、企業の名前と同時に女子栄養大学の名前も広まる。市場認知、社会認知の両方につながっていくのです。インターンシップをやり、就活の中で認められて、多くの会社から就職の求めが来ています。本学のような小さい大学の生き残りは、偏差値ではなく、しっかりとした教育力、就職力だと思います」。教育力の高さは、卒業生の評価を高めるうえでも重要だ。「養護教員でも管理栄養士でも、女子栄養大の卒業生は訓練のされ方、勉強の仕方が違うと一目置かれることが増えている。きちんと教育して社会に送り出しているという評価が広がることが、何よりのアピールになっています」(染谷常務理事)。今後の方向性について香川学長は「今の教育を進めることが大事。定員増や、看護学部・医学部等の新設といった展開は全然考えていません」と言う。例えば医療現場では今、他職種が連携して患者の栄養管理にあたる栄養サポートチーム(NST: Nutrition Support Team)という形態が広まってきている。そこに入って、医師、看護師、薬剤師等と対等にコミュニケーションできる人材を、栄養学部として育成していきたいのだという。「別に体制を変えたくないとか変化は必要ないとかではなく、社会のニーズに合わせて変わるところは変わる。産学官連携等を通じて社会から情報を頂き、そのニーズに対してどう返すか、どういう人材を育成するかをリフレッシュしていくし、機敏に動いていく。ただ、『食は生命(いのち)なり』のモットーや、食と健康の問題を解決できる人材を育てていくことは、全くブレないということです」(香川学長)。150件に及ぶ産学官連携を実現「よく訓練されている卒業生」という評価(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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