カレッジマネジメント207号
62/70

64リクルート カレッジマネジメント207 / Nov. - Dec. 2017い限り、個々の大学の競争力は高まらないし、高等教育全体の将来を描くことも難しくなる。特に、「非正規雇用の処遇改善」は、教育研究の基盤に密接に関わるテーマであると同時に、経営面でも難しい対応を迫られる問題である。教育研究の高度化、学生支援の充実、グローバル化、社会貢献など大学の業務が増加する一方で、国公私立を問わず多くの大学において人件費抑制を余儀なくされるなか、非正規雇用の教職員への依存度を高めているのが大学の現状である。競争的資金へのシフトも有期雇用の教職員の増加をもたらす要因となっている。このような状況において、2013年4月施行の改正労働契約法により無期転換ルール(有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できるルール)が法定化され、2018年4月には無期転換の申し込みが本格化することが予想されている。大学等の研究者・教員については、2014年4月に無期転換申込発生権までの期間を10年とする特例が設けられたが、無期転換ルールに対する大学の対応方針が不当な雇い止めにあたるとの指摘がなされる等、混乱も生じている。同一労働同一賃金の実現による非正規雇用の処遇改善については、2016年12月に政府により「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示され、これに沿って立法に向けた準備が行われているが、大学においても、ガイドラインに対する理解を深めながら、非正規雇用の教職員に関する人事施策の検討を加速させる必要がある。その際に重要なことは、正規か非正規かに関わらず、期待する役割、付与する職務、求める能力などを明確にした上で、処遇条件との対応関係を含めた人事制度を合理的説明が可能な形で設計することである。長時間労働の是正も大きな課題である。勤務時間の実態は大学によっても部署によっても異なり、個人間の差も大きいものと思われる。また、教員と職員では業務の性格が大きく異なる上に、裁量労働制の適用の有無もあること業務実態の正確な把握と改善活動の持続・定着から一括りに論じることは難しい。しかしながら、長時間労働の常態化が仕事の効率と質の低下をもたらし、疲労の蓄積を通して心身の健康に影響を及ぼし、仕事と生活の両立を困難にするという点は、職種を超えた共通の問題として認識しておく必要がある。ヒト、モノ、カネ、情報という4つの経営資源のうち、例えばモノとしての機械には性能があり、カネには金額という価値があり、ともに数値でその投入量を把握することができるが、ヒトの能力は数値などにより客観的に表すことができない。その結果、貴重な資源を遊ばせることもある一方で、能力を超えて使い過ぎる危険性もある。重要なことは、教員か職員かに関わらず、業務実態を正しく把握することである。職員については上司にその責任があるが、人事部門が全学的な視点で負荷状態をモニタリングすることも必要である。教員については職員と併せて年に一回程度アンケート調査を行う等して、業務実態を把握することが望ましい。その上で、生産性向上を目指し、無駄な仕事をやめる、仕事を標準化する、AIを含む情報技術を活用する、時間による評価から成果による評価にシフトする、個々人の職務遂行能力を高める、といった取り組みを徹底し、息の長い活動として定着させることが重要である。政府が進める働き方改革は法規制など労働制度面での対策が中心となっているが、現場レベルで必要なことは、業務実態の正確な把握と改善活動の持続・定着である。長時間労働の問題を解消しない限り、治療と仕事の両立、子育て・介護等と仕事の両立、外国人材の受け入れ、女性の活躍促進、高齢者の就業促進のいずれも実現困難である。長時間労働の是正は働き方改革全体の成否の鍵を握っているといって過言ではない。教職員に柔軟な働き方を含めて多様な選択肢を提供し、個人の置かれた状況やキャリアに対する考え方に基づき働き方を選択できる仕組みを整えることも、大学をより一層働きがいのある職場にしていくために必要になってくるものと思われる。多様な働き方が選択できる職場をどうつくるか

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る